ラグビーの大学選手権は12月14日に3回戦が行われる。

 昨年、大学選手権に出場できなかった関西学院大は、東大阪市花園ラグビー場で福岡工業大を迎え撃つ。その一戦に、関学大・副将の小林典大(てんた・京都成章高出身)は静かに闘志を燃やしている。

 身長185cm・体重106キロ。屈強な体をもつ小林は、バックローとして攻守に豊富な運動量を誇り、ジャッカルやトライでチームに流れを持ってくる。そのプレーは堅実で、チームに安心感をもたらす存在だ。

 (小林典大選手)
 「今年の関学大は仲が良い。このチームで勝ちたいという思いが最終学年になって特に強くなりました」

 寡黙な性格に見えるが、情に熱い部分を持ち合わせる。そして、これまでの実績も輝かしい。U20日本代表やJAPAN XVにも選出。大学卒業後はリーグワンのチームに入団することも決まっている。


●エディー・ジョーンズHCとの出会い

 そんな小林にとって、ラグビー面で大きく成長するきっかけが今年あった。それは2月に行われた若手育成を目的とした「JAPAN TALENT SQUADプログラム 2025」に選出されたこと。将来有望な23歳以下の選手が選抜され、現日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチの指導を受けた。

 アカデミー育成が日本ラグビー界の未来を明るくすると考えているエディー氏。日本代表と同じ超速ラグビーを体現するため、とにかく走り、体をぶつけあう過酷な合宿が行われた。

 その後のオーストラリア遠征では3試合が行われたが、小林が出場できたのはたった1試合のみ。

 「自分には何が足りなかったのか?」小林はエディーHCに直接問いかけた。

 すると返ってきた答えは、「日本代表としてプレーするには、運動量や体のキャパシティーが足りていない」という単純明快な回答だった。その言葉は、小林の心に火をつけた。

 (小林典大選手)
 「高校まで世代別の代表に選ばれるような選手ではありませんでした。なので、レベルが高い世界でラグビーをしてたくさんの刺激を受けました。自分が強みとするところは、泥臭く一生懸命にプレーするところ。取り組むべきことが明確になりました」

 課題がはっきりしたことで、大学に戻ってからの練習も充実したものになった。そして、世界を体感したことでより一層『桜のジャージー』への思いも強くした。


●「今の関学大メンバーと少しでもラグビーを長く続けたい」

 典大の名前の由来は、手本となるような正しい生き方でたくさんの人から親しまれ、愛され、心も身体も大きな人になって欲しいという思いが込められている。

 その思いのように、この1年で精神面もラグビー面も成長できているという自負がある。そして、副将としてチームを愛し、学年を問わずコミュニケーションをとることを心がけ、闘う集団に仕上がってきた自信もある。

 (小林典大選手)
 「大学選手権は2年間ずっと出たい思いがありました。後悔なく終わりたい。何回も言うんですけど、本当に今のチームが大好きなんですよ。目の前の試合を大切にして勝ち切って、チームとして成長していきたいと思っています」

 いよいよ、泣いても笑っても大学最後の戦いが始まる。