乗客・乗員20人が死亡、今も6人が行方不明になっている知床沖の観光船沈没事故で、国の運輸安全委員会は15日午前、沈没の原因について、船首甲板のハッチから海水が流れ込んだためとする経過報告を公表しました。
中間報告書によりますと、4月23日に沈没した観光船「KAZUⅠ(カズワン)」の位置が最後に確認された「カシュニの滝」沖では、波の高さが2メートルに達していました。
また「KAZUⅠ」の船首の甲板のハッチのふたが、事故前から、きちんと閉まらないようになっていたこともわかっています。
こうした状況の中、船の揺れでふたが開いたハッチから、高い波によって大量の海水が船の内部に流れ込んだ上、外れたふたが当たって客席の窓ガラスも割れ、客室にも海水が入るようになり、沈没したと推定されるとしています。
さらに、エンジンが停止した原因は、機関室に流れ込んだ海水によって、燃料を噴射するために必要な電子部品がショートした可能性が高いと指摘しています。
「KAZUⅠ」は2015年4月、2つあった主機関とプロペラを1つずつに改造されていました。
その際、軽くなった船の重心のバランスをとるため、バラスト(砂袋)1.5トンを積載し、JCI=日本小型船舶検査機構に承認された航行条件には「船尾、船底に設置されたバラスト(砂袋1.5トン)の移動を禁止する」と記載されていました。
しかし、事故当時の状況を調べると、バラストは、船首区画、倉庫区画、機関室及び舵機室、それぞれに分散して搭載されていました。船尾、船底にバラストがある状態では、船首が上がりすぎ、操船しづらいことなどが理由とみられています。
安全委は、最終報告の予定を未定としていますが、今後、報告書の内容を踏まえた上で、運航判断や検査の実効性などが事故にどのような影響を与えたかを分析する方針です。
今回の経過報告について、運航会社の桂田精一社長は15日、HBCの取材に対し「今は、まだコメントできません」と一言だけこたえています。