マッチングアプリで出会った彼氏が“妻子持ち”だった…。女性が賠償を求めて訴えた裁判で、東京地裁は男性に約150万円の支払いを命じました。「独身偽装」その被害の実態とは。
■マチアプで交際 ウエディングドレスの話題も
独身偽装されていたマイコさん(仮名)
「ここまで愚弄されると『なめてるな』と。私、恋愛ごっこの道具にされていたんだって」
2年前にマッチングアプリで、大手広告会社勤務の男性と出会い交際を始めたマイコさん。
アプリのプロフィール欄に「既婚者お断り」と書き、不倫への強い抵抗感を直接伝えていましたが、それでも男性は積極的だったといいます。
独身偽装されていたマイコさん(仮名)
「『ちょっとでも会いたい』とか。2日後くらいに『次、休みいつ?』『じゃあ休みの日に会いたい』と。今までお付き合いした方も、その頻度では会っていなかったので、すごく熱心な方だなと」
レストランで食事をしたり、水族館にデートに行ったり。絵に描いたような幸せなカップルでした。
独身偽装されていたマイコさん(仮名)
「LINEも朝から晩までずっとやりとりしていた。“既婚者あるある”の土日会えない・繋がらない・夜に返ってこないとかが全くない」
交際中の実際のLINEでは、「マイコから得られる栄養素が足りてない」「笑った時に目が細くなるところが好きすぎるんよw」などのメッセージが。
ウエディングドレスの話題が出たこともあったといいます。
時には痴話喧嘩をすることもありましたが、「『他に大事な人とか今はいないよ』ってハッキリ言っておけば良かったね」などと送られてきたそうです。
そんな幸せな日々は突然、終わりを迎えることに。
■音信不通からまさかの発覚
独身偽装されていたマイコさん(仮名)
「ある日突然、音信不通になった。本当に仕事もままならず、眠れず泣いて暮らして」
交際開始から4か月経った2023年10月、予定していた旅行の前に突如、男性にLINEをブロックされたのです。
心配になったマイコさんは探偵に調査を依頼。発覚したのは、男性に妻子がいるという事実でした。
独身偽装されていたマイコさん(仮名)
「見事にバーンと家族4人が出てきて、朝。写真を見たときはもう本当に衝撃で。特に小さいお子さん2人、まだ幼稚園とかの子が(いて)一番つらかった。この子どもたちを置いて『この人何しているの?』と」
交際期間中、性行為は何度も行われました。その様子を動画撮影されたこともあれば、避妊具をつけられなかったこともありました。
独身偽装されていたマイコさん(仮名)
「結果的に私は彼の都合のいい性搾取の相手にされて、モノのように扱われていたなと感じている」
その後、互いに弁護士を立て話し合ったものの、男性側から謝罪はなく、解決金20万円の支払いを提案されました。
納得できなかったマイコさんは、2024年、損害賠償を求めて民事裁判を起こしました。
独身偽装されていたマイコさん(仮名)
「そのまま音信不通で逃してしまうことが一番良くなかった。私としては次の被害者を出したくない」
2025年10月には、法廷でマイコさんが男性に直接、問いただすことができました。音信不通になって以来、2年ぶりの再会です。
原告・マイコさん(仮名)
「結局のところ、あなたは私に好意があったんですか」
被告・男性
「好意というのは、すいません、ちょっと分からずで」
原告・マイコさん(仮名)
「最後まで体目的であったんですか」
被告・男性
「はい、私の元々、始まりはそこから関係がスタートしてると認識しました」
■“妻子持ち”隠した男性に賠償命令
そして、迎えた判決の日。東京地裁は男性に対し、慰謝料など約150万円の賠償を命じました。
東京地裁
「被告が既婚者であることを意図的に秘して、原告と性行為を繰り返したことは原告の貞操権を侵害する故意の不法行為に当たるものと認められる」
独身偽装されていたマイコさん(仮名)
「思わず判決を聞いたときは、感極まって涙が出てしまいました」
ーー相手方に伝えたいことは?
「二度とやらないでほしい。人として自分が行ったことの重大性をちゃんと向き合って考えてみてほしい」
「家族に紹介していた彼氏が独身と偽っていた」「出産適齢期を逃してしまった」。マイコさんが立ち上げた「独身偽装被害者の会」にはさまざまな訴えが寄せられています。
男女間トラブルに詳しい弁護士は、今回の裁判で侵害が認められた「貞操権」について…
男女間トラブルに詳しい 川面武 弁護士
「性的自己決定権の一種。特に既婚者と性的関係を持ちたくない利益。独身と偽って性的関係を持てば、慰謝料額はどうなるか別にして、それだけで不法行為は成立するという考え。それが裁判例でも多数だと思う」
マッチングアプリでの出会いが一般的になる中、“潜在的な被害者は多い”とマイコさんは話します。
独身偽装されていたマイコさん(仮名)
「どうしても泣き寝入りをしてしまう人が多いのが現状。人間不信になってしまうので、今後の交際自体も難しいという被害者もたくさん見てきた。そもそも加害をしない世の中になってほしい」
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