なぜ1社だけ?消えゆく伝統の味を守る「11の手作業」
加藤秀治社長によると、富士製パンのようかんぱんの製造が始まったのは1960年頃。すでに65年経っています。発売当時の昭和30年代は、あんパンやジャムパンと並ぶほどの人気で、県東部地区でも何軒かで作られていたといいます。
しかし、時が経つにつれ「製造工程の複雑さ」などから現在静岡県内で作っているのは富士製パンのみといわれています。
「いい生地を作るために、その日の温度や湿度によって、水の温度や量を調整したりして、生地の出来を調整しています」と語る職人歴13年の津本浩司さん。
ようかんぱんの製造工程はなんと11工程。そのすべてを職人が手作業で行っています。

例えば、「ぼっちょ刺し」と呼ばれる工程では、「ぼっちょ」という木の杭を使い、バニラクリームを入れる穴を作るため、発酵した生地の真ん中に、焼き具合も考慮しながら刺し込んでいきます。職人歴40年の田中博幸さんは、「まず真ん中に刺すことと、押しすぎない」と話します。
さらにここから職人の技が光ります。
焼きあがったパンを温めた液体のようかんにくぐらせる作業は、まさに職人技。すぐにようかんが固まってしまうため、素早くきれいに仕上げるのが難しいといいます。
<職人歴2年 ハルシャニ・プラモーダさん>
「きれいになるように(作業している)」
最後にバニラクリームを絞ってようかんぱんの完成です。長年親しんできた富士市民には、「おいしいです。あんぱんだけじゃなく、ようかんがのっているのも他では見たことがないですから」「あんぱんみたいな感じなんだけど、ようかんというところが食べやすいんじゃないんですかね。やっぱり牛乳と一緒に食べるとよりおいしくなると思います」とそれぞれに愛する理由があるようです。














