逃げ出せなかった理由 家庭という絆

曽我ひとみさん

曽我さんは講演会でよく「何のために連れてこられたのですか?」と質問される。

実はよく分かっていないという。

そういう目的のために拉致してきたと説明を受けたことが1度もないからだ。
最終的に、現地に住んでいる外国人か拉致された韓国人など、何か訳ありの人との結婚相手だったのではないかと結論づけた。

どうして結婚させるのか。
それは北朝鮮から逃げられないようにするためだと曽我さんは考えている。
家庭を持てば、やがて家族が増えれば、逃げ出そうなどと考えなくなるからだ。

曽我ひとみさん
「現に私は逃げ出せなかったのです。守るべき家族が何よりも大切な存在となったからです。気持ちの半分は日本に帰りたい、母に会いたいとの思いがあるのに、残りの半分はこの家族をなんとしても守っていかなければならないとの使命にも似た感情があったように思います」

曽我ひとみさんの講演は全5回の連載です。
「ここは北朝鮮という国だ」連れ去られたのは聞いたこともない国…拉致被害者・曽我ひとみさんが語った"母と引き裂かれた47年前の恐怖"【全5回連載①】
「いつもニコニコとあの可愛らしいえくぼを見せていました」拉致被害者・曽我ひとみさんが語った横田めぐみさんとの8か月【全5回連載②】
「このまま一生を終えるのか…」拉致被害者・曽我ひとみさんが語った絶望と希望 24年間の北朝鮮生活で支えになったもの【全5回連載③】
「どうせ今度もダメだろうな…」日本の政治家に抱いた淡い期待と寂しさ。拉致被害者・曽我ひとみさんが帰国23年で語った胸中【全5回連載④】
「『ただいま』『おかえり』を言いたいだけ」拉致被害者・曽我ひとみさんが訴えた47年越しの願い 母との再会「長くは待てない」【全5回連載⑤】