壁から床へ広がる“宇宙”──いろはが描いた世界
茉海恵の一人娘・いろは(池村碧彩)の才能に、もう1人の主人公で東大卒の元エリート・花村薫(波瑠)が気づくきっかけとなったのが、いろはによって日高家のリビングに大胆に描かれた太陽系の落書きだ。単なる装飾ではなく、キャラクターの個性や想像力を映す重要な要素として位置づけられている。
「演出部と話しながら、惑星の距離や比率をざっくりと計算しました。太陽から地球の距離を1として、他の惑星をどう配置するかを図面に落とし込み、子どもらしい感覚を残しながら、アートになり過ぎないよう調整しています」と古積さん。
この太陽系は壁だけでなく、床まで広げる方向に固まり、クレーンカットを想定した空間設計として完成度を高めた。色の違いや反復のリズムによって、各惑星にいろはなりの個性を持たせる遊び心も加わっている。「天才児っぽくなり過ぎないように、でも見栄えは良く。シンプルに、でも遊び心はしっかり入れる、というバランスです」。
いろはの部屋に吊られたモビールや小さなオブジェもまた、彼女が宇宙に憧れを抱くキャラクターであることを優しく示す存在だ。「太陽系のモビールが吊るしてあるのですが、画的に映ることで彼女の興味が自然と伝わるようにしています」。
さらに、1人で過ごす時間が多いいろはの“心の居場所”として、照明や電飾にも細やかな配慮が込められた。「1人で寝るのは寂しいだろうなと思って、小道具さんが見つけてきてくれたネオン管や、暗くしても安心感のあるライトを置きました」と古積さんは振り返る。
こうした積み重ねによって、いろはの部屋は“子ども部屋”にとどまらず、彼女の個性と家族の温度が立ち上がる、物語に寄り添う空間として成立している。














