“食へのこだわり”が宿るキッチンという物語装置
茉海恵の人物像を最も強く反映したのがキッチンセットだ。古積さんは「茉海恵には“食へのこだわり”が深く根付いているんです」と語る。キャラクターシートから、忙しい毎日の中でも“手作りの料理が人を育てる”という信念を大切にしている人物像が読み取れ、「娘への愛情と、食に対する誠実さが自然ににじむ空間にしたかった」と話す。
そうしたキャラクター像を踏まえ、キッチンは“実用性と温もり”を併せ持つ形に設計された。調味料や調理器具の配置も、料理の流れを想像しながら「忙しいけれど手を抜かない人」という生活の質の高さが、空間からも伝わるよう意識したという。
中でもこだわったのが、劇中で存在感を放つ“古い冷蔵庫”だ。台本に明確に記されていたアイテムで、実家感のある佇まいを再現するため、美術チームが時間をかけて探し当てた。そういった細やかな判断が、あの“実家のようなキッチン”を成立させている。














