「第3のニューライト」の重要人物たち

こうしたニューライトの流れには、大きな役割を担った人々がいます。

パトリック・デニーン

新右翼の代表的思想家として、井上さんはパトリック・デニーンを挙げます。デニーンは『リベラリズムはなぜ失敗したのか』の著者として知られ、オバマ元大統領にも高く評価された人物です。

「デニーンは自由主義がアメリカにもたらした弊害として二つを指摘しています。一つは自由の名のもとでの社会格差の拡大、もう一つは文化の軽視です」と井上さん。

特に文化面では、デニーンにとってキリスト教的価値観が重要だと言います。「デニーンの場合、文化と宗教、この二つはほぼ一体的なものとしてイメージされています」

この立場は、アメリカの建国の礎である「自由」という価値を捨てるという衝撃的な主張を含んでいますが、現在のトランプ政権の副大統領J.D.ヴァンスとも関係が深く、若手世代に影響力を持っているといいます。

タッカー・カールソン

保守系ニュースネットワークFox Newsのアンカーだったタッカー・カールソンは、トランプの熱狂的支持層「MAGA(Make America Great Again)」の考え方を代弁する人物として知られています。

「カールソンは独自のストリーミング配信を行い、ハンガリーのオルバン首相やロシアのプーチン大統領との単独インタビューなど、従来の大手メディアができなかったことをしています」と井上さん。

カールソンのようなインフルエンサーは、インテリ層の新右翼とトランプ支持の民衆をつなぐ役割を果たしており、「従来の価値観を転覆させるようなメッセージの発信の仕方、メディアの使い方をしている」と井上さんは分析します。