第1から第3までのニューライト(新右翼)

現代の新右翼は「第3のニューライト」と呼ばれていますが、その前にも第1、第2のニューライトが存在しました。井上さんはその歴史を次のように説明します。

「第1のニューライトは第二次世界大戦後に現れました。彼らは1930年代のニューディール政策に反対したオールドライトの立場を継承しつつ、冷戦時代に入って反共主義の立場を強く打ち出しました。経済的には自由市場と小さな政府を信奉し、政府による社会保障を『泥棒』とまで呼び、共産主義との世界的な戦いのためにアメリカが軍事的・経済的に介入することを推進しました」

続く第2のニューライトは、1960~70年代に公民権運動や伝統的価値観の衰退などが起こる中で、より宗教色を強めました。

「キリスト教的価値観が世俗化していく中で、その価値観を守るべきだと考える若い世代が台頭しました。特に中絶や学校での祈りといった社会問題に焦点を当てた『モラル・マジョリティ(道徳的多数派)』などの宗教右派運動が活発化し、第1のニューライトと合流していったのが第2のニューライトです。この第1と第2が合わさった考え方が、レーガン政権を支える保守の主流派を形成しました」

そして現在の第3のニューライトは、前の2世代とも異なる特徴を持ちます。

「21世紀に入り、グローバル化の進展とリベラル派が主導する多様性の重視の中で、従来の自由主義的な保守の立場では対抗できないと考える人々が登場しました。彼らは、経済的な自由競争が国内の共同体を破壊し、文化的なリベラリズムが伝統的な価値観を蝕んだと考え、『自由』という価値そのものを見直すべきだと主張します。そして、キリスト教的価値観に基づいた強い国家による国づくりを目指すようになったのです」

この思想は、これまで保守派が掲げてきた「小さな政府」という理念からの大きな転換を意味します。彼らは市場の自由に任せるのではなく、国家が積極的に経済や文化に介入し、国内産業を保護し、伝統的な家族観を奨励するなど、共同体の秩序を維持するべきだと考えているのです。