アメリカの第2次トランプ政権を支えるのが、単なる保守思想とは一線を画す「新右翼(ニューライト)」と呼ばれる潮流です。彼らはリベラルだけでなく、従来の保守エリートにも反旗を翻し、アメリカのあり方を根本から変えようとしています。この複雑な思想の正体とは何か? 神戸大学教授の井上弘貴氏と哲学者で関西学院大学准教授の柳澤田実氏が、その歴史的背景からテック右派の台頭まで、アメリカ政治の地殻変動の核心を解説します。

(TBSラジオ『荻上チキ・Session』2025年10月27日放送『トランプ大統領が6年ぶりに来日。第二次政権、その背景にある新右翼の思想とは?』より。構成:菅谷優駿)

「新右翼」とは何か?その歴史的変遷

井上弘貴さんによれば、新右翼(ニューライト)とは、リベラルな立場に反対するだけでなく、従来の保守派にも異を唱える新しいタイプの右派です。

「新右翼の人たちは、リベラルはもちろん、ネオコン(新保守主義)など従来の保守の主流派にも反対の立場を唱えています」(井上さん)

特に新右翼が反対する立場として、「多様性重視のリベラル」と「世界の警察官としてのアメリカの役割を肯定する保守派」の二つが挙げられます。さらに、「アンチ・ネオリベ(反・新自由主義)」の立場も取り、経済や文化に政府が積極的に介入することを支持する点も特徴だといいます。

新右翼が従来の保守派、特にネオコンを批判するのは、グローバリズムを推進し、製造業の空洞化や移民問題などを通じてアメリカの国力を損なった「エスタブリッシュメント(既成支配層)」の一部だと見なしているからです。新右翼にとって、リベラルも旧来の保守も、アメリカの伝統的な価値観や共同体を破壊してきたという点では同罪なのです。