財政悪化を懸念…市場が警鐘?

大規模な経済対策による財政悪化懸念が高まり、市場は大きく反応した。

円相場は約10か月ぶりに、1ドル=157円台に。ユーロも、導入以来初めて1ユーロ=180円台の円安水準となった。

『三菱UFJモルガン・スタンレー証券』植野大作さん:
「1か月の10円の円安速度というのは確かにものすごく速い。“今の政策運営に対して警鐘を鳴らしている”面もなきにしもあらずだと思う。短期的に物価高で苦しんでいる人に1回お金をばらまくとか、付け焼刃的なものになっているということもマーケットのネガティブなリアクションの一因になっているのかもしれない」

一方、日本国債を売る動きも加速している。

20日の債券市場では、長期金利の代表的な指標である「10年物国債」の利回りが一時1.835%まで上昇。“約17年半ぶり”の高い水準となった。

植野さん:
「もともと市場から財政規律が緩い国だと思われていただけに、日本経済を強くするための支出であれば財源は赤字国債でも構わないというような高市内閣の経済対策に、やはり市場も懸念を持っている。それで満期の長い国債ほど売られて超長期金利が上がる。野放図な放漫財政じゃなく、“日本経済の国力を上げる方向に財政を使いつつ、実質金利のレベルも上げる”。そういう方向感を見せていくことが必要になってくるのかもしれない」

『BNPパリバ証券』の中空さんも、円安や長期金利の上昇は「市場からの黄色信号」だと指摘する。

『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「マーケットというのは、みんなの総意みたいなものが出てくる。それは恣意的に動かないもの。そうすると金利や為替などは『結構大変なことが起きるのでは』という懸念を示してる数字になってきている。長期金利がこのまま上がって、例えば10年物で2%をつけてきたら、割と多くの金融機関のポートフォリオには影響が出てくると思い、30年とか40年の金利で4%となると様変わりだと思う」

――心配なのは、円安と長期金利上昇のシンクロや、長期金利の上昇⇒財政圧迫⇒財政悪化懸念で長期金利上昇、という「悪循環」

中空さん:
「その悪循環を止めるためには、日銀が政策金利を上げていけるかどうか。金融緩和と財政出動のミックスでやるとなると、結構厳しくなってくる」