JR福知山線脱線事故の発生から20年となった今年、1冊の本が出版された。事故車両の2両目で重傷を負った小椋聡さんが中心となって執筆・編集された、「わたしたちはどう生きるのか」。
小椋さんは、犠牲者の最期の乗車位置を探す活動など、脱線事故に関する様々な活動を続けてきたが、20年を経て、「自分の言葉だけ、当事者の言葉だけで話をするということをどこまで続けていけるのか、続けていくべきかという点を考えるようになった。私たちが経験した困難や、皆さんが語らないけど経験した困難を、第三者と言われている人たちが、どんなふうに共感して、伝承していくのかがこれからの大きなテーマになると思った」と語る。
今年4月の発刊から半年以上が過ぎたが、本はいまも静かに売れ行きを伸ばしている。
「事故を知る」「事故を伝える」「その後を生きる」

この本は、「第1章 事故を知る」「第2章 事故を伝える」「第3章 その後を生きる ~私たちが生きる社会」の3章構成となっている。
第1章では福知山線脱線事故が発生した経緯や要因と、事故の社会的影響について、小椋聡さんが執筆。
第2章では、東京での福知山線脱線事故に関する展覧会を企画し、2015年に開催を実現させたライターの木村奈緒さんが、企画・開催に至った思いやプロセスについて寄稿。展覧会で行われた、トークセッションも採録されている。
第3章では、事故に遭ったあとの人生や活動について、小椋さんや、1両目で負傷した福田裕子さんが執筆。また、東日本大震災時に石巻市立大川小学校で被災して津波に呑まれ、自らは奇跡的に一命を取り留めたものの、祖父・母・妹を亡くした只野哲也さんが、被災後の活動や人生について記し、そのうえで、去年11月に東京で行われたシンポジウムでの3氏の公開対談が採録されている。
小椋さんと只野さんは、2024年以降、大川小や脱線事故現場を相互に訪問するなど、交流を重ねてきた。














