「デフレ脱却」を強調する高市総理
もうひとつ心配な点は、高市総理の発言が、インフレに「寛容」と受け取られかねないことです。
高市総理は、「デフレを脱却したとは、まだ言えない」と述べた上で、「コスト上昇による物価上昇を需要が引っ張る物価上昇に変えていかなければならない」「そこまでは気が抜けない」と説明しています。
私には、ディマンド・プル型の物価上昇を実現するためには、物価上昇圧力はやや高めの方が良いと考えているように聞こえます。新内閣のプレーンに、「リフレ派」と称される人々が名を連ねるようになったことも、そうした見方に拍車をかけています。
経済政策の司令塔である経済財政諮問会議の民間議員に、日銀元副総裁の若田部昌澄氏らが任命された他、高市総理肝いりの日本成長戦略会議にも元日銀審議委員の片岡剛士氏らが入りました。
問題は、どこまでインフレを許容するのか
そもそも今のインフレが、「コスト・プッシュ(上昇)」か、はたまた「ディマンド・プル」なのか、というのは、概念的には理解できても、消費者が実際に買い物をする際に意識するものではありません。経済学の研究としては意味があっても、現実の経済活動で定量的にそれを把握することは困難です。国民にとっては、3%ものインフレは、コスト・プッシュであろうが、ディマンド・プルであろうが、それでは生活が苦しい、ということに尽きています。
インフレに寛容な思考や政策がとられるのであれば、国民生活の実情や選挙での「民意」とは、ズレが生じていくことになるでしょう。何より、2025年の日本は、アベノミクスが始まった2012年とは全く環境が異なっているのです。
インフレ加速で一番困るのは、賃金がなかなか上がらない一般の家計であり、実質的に資産が目減りする高齢世帯です。逆に一番得をするのは、「借金」を抱えているセクター、その代表は「日本政府」です。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)














