刑法190条と憲法31条――明確性の原則
弁護側の論旨
弁護人は、刑法190条は憲法31条に基づく刑罰法規の明確性の原則に反するので無効であると主張した。
「遺棄」の概念があいまい不明確であるというものだ。
福岡高裁の判断
福岡高裁は、ある刑罰法規があいまい不明確を理由として憲法31条に違反するものと認めるべきかどうかは
「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによって決すべきである」
との判断基準を示した。
その上で、刑法190条が規定する「遺棄」とは、習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体等を放棄し又は隠匿する行為であると定義した。
この定義によれば
「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に『遺棄』に当たるかどうかを判断することは十分に可能であると認められる」
とし、刑法190条が憲法31条に基づく明確性の要請を満たすことは明らかであると判示した。














