福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える「老舗物語」。今回は金属を扱って160年以上続く福島市の板金店です。受け継がれてきたのは挑戦し続ける姿勢。そこから長く愛される理由が見えてきました。
切断、曲げ、溶接など、高精度な技術で金属板を加工して作られる、『精密板金』。金属を扱い160年以上の歴史を持つ会社が、福島市にあります。
永沢工機。率いるのは、8代目の永澤耕三さんです。そのルーツは、江戸時代の刀鍛冶から始まりました。
--永澤耕三さん(8代目)「明治の頃は板金というより鍛冶屋さん。鍬とか鋤とか、ドアの蝶番とかなんでも作っていたようですね。」
金属を自在に加工する技術を生かし、現在は様々な形状の精密板金を製作。分析器や防災設備、医療機器のカバーなど、小さな部品から大きな製品まで作っているんです。
その品質の目指すところは「世界一流」。正確さはもちろん、指紋一つ残すまいという、綺麗に作ることへのこだわりも忘れません。幅広いジャンルのものづくりを行うことには、代々受け継がれてきた教えにワケがありました。それが「可能性の追求」です。
--永澤さん(8代目)「鍛冶屋さんがルーツですから、頼まれたものは断らない。なんでも作る。ちょっと丸めるとか難しいんですよね。薄いものの溶接とか微妙に調節してつけるなど、無理といわないでやっちゃう。」
“断らない。お客様の望むものはすべて作る”
その結果、これまで繋がりのなかった新しい顧客も確保できるようになりました。そして、追求するのは板金加工技術だけではありません。
--永澤さん(8代目)「職場の改善は従業員の成長の証、ということになる。今より明日、もっと上手にやれないかを従業員が考えて紙に書いてやっている。」
職場環境の改善も社員全員で検討。工場としてよりベストな状態を追求し続けることが納期の短縮や品質の向上、さらには、コストダウンにもつながっているんです。そんな「可能性を追求」する会社では、2年前から、こんな製品の製造を始めました。
--永澤さん(8代目)「キャンプ用の焚火台です。」
なんと、アウトドアブランドを立ち上げたのです。
--八巻直人さん「材料も国産で、板金のプロ集団ということで品質には自信がある。既存のデザインは火をともした時に綺麗に映るように工夫されていたり、オーダーメイドも受け付けている。」
こだわりの詰まった焚火台の製造販売。きっかけは、若手社員のアイデアからでした。
--永澤さん(8代目)「下請け企業だから自社製品を持っていなかった。取引先が不景気になると弊社も不景気になる。それを従業員が心配して、アウトドア好きがいっぱいいて、焚火台を商品にしたらと提案された。それを作る従業員の創意と工夫、今までのような受注ではなく自分達で世の中に売っていくという勉強のために、好きなようにやってみなさいとした。難しいかもしれないけど、一歩踏み出すのが大事だなと思いました。」
自分が苦労するときは、従業員も苦労していると語る耕三さん。代々受け継がれてきた「可能性の追求」に、一心同体で取り組んできた結果が、新たな歴史をスタートさせたのです。
--永澤さん(8代目)「会社を率いるうえで考えていることは、会社はファミリーだということ。言ってやってもらうのではなく、自分で気づいてやっていくということに気を使って、うるさく言うのではなく成長を促すような勉強する機会・知る機会などを設けているよいにしてる。そんな中で一歩一歩積み重ねていくかというところでここまで来ました。アリの一歩だから、時間はかかります。」
会社は喜びも苦労も共有するファミリー。「今日よりも明日はいい会社に」と考え続ける従業員と、それを見守り、背中を押す大黒柱。その信頼関係が、長く愛され続ける老舗企業へと、一歩一歩成長させているのかもしれません。
『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年11月14日放送回より)














