インバウンドで賑わう北海道の観光業界。いま、ある取り組みが注目されています。
従来の「観光協会」などの枠組みを超え、地域全体が満足できる、いわば”進化型の観光協会”、それがDMOという存在です。

スキーシーズンを前に、北海道旭川市のゲレンデではゴンドラが。赤く色づき始めた木々を横目に頂上に向かうと…。

観光客
「海ですか?見えるんですか⁉」


冬に限っていたゴンドラの運行を10月から前倒ししてスタート。2024年、新たに展望台まで整備しました。

この取り組みに関わっているのが「大雪カムイミンタラDMO」。旭川市など、上川地方の1市8町で構成する地域組織です。

「DMO」とは、観光を”運営・経営”する組織のことです。

地域の観光戦略を担う司令塔として、観光地を丸ごと経営しちゃおう!そんな取り組みが全国各地で進んでいます。

大雪カムイミンタラDMO 佐藤昌彦副理事長
「旭川、北海道第2の都市なんで、都市型スノーリゾートという基軸ですね、この地域の特徴を生かした地域づくりを行っているということ」

欧米からのインバウンド客を軸に、四季を通じた地域づくりを進めています。

DMOは10年前の2015年に始まった、国による登録制度です。

「大雪カムイミンタラDMO」は2017年登録の、いわば初期メンバー。力を注ぐのは、観光分野だけではありません。

高橋智也記者
「ここはどこなんですか?」

上川大雪カムミンタラDMO 服部慎一マネージャー
「ICTパークという施設でeスポーツで外からの来訪者を増やす取り組みですとか、最新のICT技術を使って観光の分野でも人手不足とかいろんな課題に対応できるようなサービスを開発、発信している拠点」

「観光」「デジタル」。一見まったく別の世界を繋いで、交流の場や、人を呼ぶ仕掛けを作る。観光をきっかけに、まち全体を元気にしようという狙いです。

そして、年間300万人以上が訪れる、世界的リゾートでも…。

「持続可能で国際的な競争力が高い」との理由から、倶知安観光協会は10月に「先駆的DMO」の登録を受けました。

倶知安観光協会 鈴木紀彦事務局長
「やっぱり日本の従来の観光協会だと…限界が出るところで、DMOの役割は地域住民にも寄り添わないといけない」

倶知安観光協会では、ホテルの宿泊データを分析して、地元の事業者にフィードバック。食材の仕入れや人材確保のヒントにしてもらっています。

つまり、マチぐるみで観光を”経営”する…それが「先駆的DMO」なのです。

それだけではありません。
インバウンドの拡大に伴う、地元を悩ませる物価上昇という課題にもあります。。

倶知安観光協会 鈴木紀彦事務局長
「これが加盟店に置いてありiPhoneの場合、ここをかざすと」

マイナンバーカードを活用して、アプリで、町民であると証明すると…。日帰り温泉や飲食店も、おトクに利用できます。

例えば、リフト券は1万1000円が、なんと3000円に。観光ビジネスだけじゃなく”地元に暮らす人にも優しい”、そんな地域全体に役立つDMOが、注目されています。

倶知安観光協会 鈴木紀彦事務局長
「住んでいる人がハッピーじゃないと、来る方もハッピーに感じない。住んでよし、訪れてよしがDMOの大原則」

こうした流れの中、10月14日、札幌観光協会のトップに「DMO」の登録証書が届きました。

札幌観光協会 笹原晶博会長
「札幌は観光地として世界の中で認められる有数の観光都市/札幌市、われわれDMO、そこに参画する事業者の皆さん、そして、札幌市民、各団体と連携しながらですね、邁進していきたい」

DMOの申請には、詳細な経営戦略のプランなどが必要です。登録されると、専門家の派遣や助成金など、国の支援があります。

ただし、運用は厳格で、取り消しになることもあります。

DMOの登録数は現在332件。
後発組となった札幌が、どう独自性を出せるか。これからが本番です。

セントラルフロリダ大学 原忠之准教授
「札幌レベルの大きさだとコンサートありますよね/人が集まるわけですよ。ものすごい数が。だからそういう自分でやるようなイベント、これを仕掛けるか/だからその季節性をいかに埋めるかという部分でDMOは重要」

カギを握るのは、1年を通じて客を引き付けるマチの魅力だと指摘します。

札幌観光協会DMO設立準備室 大谷剛久部長
「事業者様が思う存分に力を発揮できるような環境を、私どもDMOとして地域のハブ役となって札幌全体で作り上げることができれば」

観光を起点に、地域の課題を解決していく。DMOは”観光の司令塔”を超え、マチの未来をデザインするチカラへ。進化が始まっています。