小4で直面した両親の離婚「父か母か…」

中江有里さん:
「父親の元で暮らすか、母親の元で暮らすかを選ぶよう言われました…。正直ね、すぐ言葉が出なかったんですね。だって突然のことですから」

「結局私は母の元に行くことにして、2つ下の妹も一緒に母の元に引き取られた。5年生からは新しい家に引っ越して、学校も変わりました。その転校先の教室のすみっこにあった本、それが私にとって忘れがたい本になったエクトール・マロの『家なき子』です」

あまりにも生活が目まぐるしく変わったため、「当時のことはほとんど記憶にない」という中江さん。しかし、その本を読んでいたことだけは覚えていると言います。

「私はかわいそうじゃない」

中江有里さん:
「不憫なレミという少年がとてもかわいそうで、読んでいて本当に共感しながら、ただ一方でこうも思ってたんです。『私はかわいそうじゃない、そんな風に思われたくない。親が離婚したって別に自分は何も変わらないじゃないか』

「今振り返ると、自分のことをものすごく客観的に見ていたんだなと。物語に共感して入っていく一方で、俯瞰して見ている自分がどこかにいた。そういう読書体験ができた。私にとって『家なき子』という本がとても大切な本になりました」