“懲らしめ”から“立ち直り”へ…「拘禁刑」で変わる刑務所

広大な十勝平野の中心部に16万人が暮らす帯広市。

重田さんは長原社長の会社で宅配ドライバーとして、社会復帰の道を歩み始めた。

職場の女性
「(納品書が)3枚つづりになっているから、下の2枚もらって。上だけ渡して」

重田さん(51)
「わかりました」

出所から2か月、運転免許を取り直した。タイヤやバッテリーなどの商品を、ガソリンスタンドや自動車販売店に届ける。

重田さん(51)
「汗水たらして働くこと自体が、自分には絶対できないと決めつけていた。そのままでは、また捕まるじゃないですか。それだけは絶対にだめだと思って」

定職に就かず、金がなくなれば詐欺を繰り返していた重田さん。刑務所での生活が長くなり、社会で人とうまくコミュニケーションが取れなくなっていった。

嫌なことがあると、すぐに逃げてしまっていたという。

職場の女性
「重田さん、これなんで納品書持って帰ってきたの?」

配達の時間に追われて焦り、取引先に渡すはずの納品書を持って帰ってきてしまった。

職場の女性
「サインはもらっているからいいけど、納品書は向こうにないとまずいから、持っていってほしい」

重田さん(51)
「すみません」
「教えてもらっているので、多少強いことを言われることはある。今までだったら間違いなく1回や2回で、逃げてしまっていた」

早く一人前と認めてもらうために、重田さんには欠かさないことがある。家に帰るとノートを広げ、配達のルートを復習している。

重田さん(51)
「スマホを出して、マップを広げて、ノートが何冊かあるんですけど、出来が悪いので」

受刑者が二度と塀の中に戻ってくることが無いよう、刑務所は2025年、明治以来の大改革を行った。新しい刑罰、「拘禁刑」の導入である。

月形刑務所の刑務官
「令和も昭和も字がきれいですね」

受刑者
「そうですか?」

刑務官
「私よりもきれいです」

拘禁刑では刑務作業を義務とせず、受刑者の特性に応じて学習指導や就職の面接練習など、社会復帰のための指導を増やしている。

受刑者を名前で、それも「さん」付けで呼び、かつて行われていた号令に合わせた行進も、今は静かに歩くだけだ。

受刑者を「懲らしめる」場から、「立ち直らせる」場に変えようとしている。

そして、札幌刑務所では「当事者研究」と呼ばれる先進的な取り組みが始まっている。