劇場版『鬼滅の刃』が北米で歴史的ヒットを記録する一方、絶対王者だったはずのピクサーは興行不振に喘いでいます。なぜ、これほどまでの逆転劇が生まれたのでしょうか?その答えは、日本の伝統文化と最新技術の融合、そしてハリウッドとは全く異なる『ファンを育てる』という独自のビジネスモデルにありました。エンターテイメント産業の未来を左右する、構造的変化の核心について、リサーチャーのcomugiが解説します。

(TBS Podcast『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』2025年10月1日配信『【ビジネス深掘り】米ピクサーが日本アニメに負ける理由。なぜ世界で『鬼滅の刃』映画が大ヒットしたのか?』より)

北米で「ポケモン」超えの記録的ヒット

劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』が北米で記録的大ヒットを飛ばしています。オープニング興行収入は推定7000万ドル(約103億円)を記録し、1999年公開の『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』を抜いて日本アニメ映画の北米オープニング興収歴代1位となりました。

この快挙の背景には、単なるアニメブームを超えた構造的な強さがあります。日本のコンテンツ産業は今や、半導体(5.5兆円)や鉄鋼(4.8兆円)を上回る5.8兆円の輸出額を誇り、自動車に次ぐ日本の基幹産業へと成長しつつあります。政府も2033年までにコンテンツ産業を20兆円規模に拡大する目標を掲げています。

その中心にいるのがソニーグループです。2026年3月期の連結営業利益は1兆2800億円の見通しで3期連続過去最高を更新し、時価総額は約23兆3000億円と、エンターテイメント産業の代名詞であるディズニー(約29兆円)に迫る勢いを見せています。

『鬼滅の刃』は、集英社、アニメーション制作会社のufotable(ユーフォーテーブル)、そしてソニー・ミュージックエンタテインメントの子会社アニプレックスの3社による共同製作作品です。海外配給はソニーピクチャーズとクランチロールが担当しています。この成功の背景には、日本アニメならではの強みがあります。