猛暑の中で津波警報などが出たらどうすべきか。政府が避難の指針に熱中症対策を盛り込む方針を示しました。一方、その内容に専門家から疑問の声もあがっています。

今年7月。カムチャツカ半島付近で地震が発生し、日本でも太平洋側の広い範囲に津波警報や注意報が発表されました。高台の公園や津波避難タワーなど、屋外に指定されていることも多い津波避難場所。木陰に人が集まり、日傘をさす人の姿も見られます。実はこの日…

「蒸し暑いって感じはしますね」

各地で危険な暑さが続出し、最高気温が40℃を超えたところも。全国で12人が避難中に熱中症で搬送され、“避難と暑さの問題”が浮き彫りになりました。

これを受け、政府は自治体に向けた避難に関する指針に熱中症対策などに関する内容を盛り込む方針を固め、きょう行われた有識者会議に示したということです。

新たな指針では、▼避難場所に日陰を作るためのテントなどを備蓄することや、▼避難するときの持ち出し品に飲み物や冷却グッズを入れておくよう呼びかけることなどが盛り込まれる方向だということです。一方で…

「徒歩避難が原則であることを周知する」

国の指針では改めて、渋滞による逃げ遅れなどを防ぐ観点から徒歩での避難を原則としましたが、専門家は疑問を呈します。

関西大学 林能成 教授
「歩いて避難した人というのは暑さに耐え切れなくて、もうお昼くらいに帰ってしまう傾向が見えている。やっぱり車で避難すると、車の中は比較的快適なので」

実際に避難した人を対象にアンケート調査を実施したところ、車で避難した人よりも徒歩で避難した人のほうが早く避難をやめる傾向にあったことがわかったということです。

警報が発表されている間は避難を続けるよう呼びかけられているものの、徒歩で避難した人の9割近くが注意報への切り替えを待たずに避難をやめていて、専門家は要因の1つとして、屋外やエアコンのない場所での避難を余儀なくされたことをあげています。

調査を行った専門家は「猛暑の時期でなくても高齢化で徒歩で避難しづらい人はさらに増える」と指摘。

千葉県の海沿いの町に住む人は…

「少しぐらいは歩けるけど、(徒歩だと)あの避難所までは行けない」

国の新たな指針では、やむを得ず車で避難せざるを得ない自治体では、避難経路の確保や駐車場の拡充など渋滞対策をするよう求める方針です。

関西大学 林能成 教授
「車避難のわざと渋滞させるシミュレーションとか、土地土地に合わせた臨機応変な避難訓練みたいなことは取り組んでいく価値があると思います」

政府は「年内にも新たな指針をまとめたい」としています。