「占い師」が男性2人に自殺をそそのかし、その信奉者が自殺を手助けしたとされる事件で、信奉者の女に判決が言い渡されました。

 占い師として活動していた浜田淑恵被告(63)は5年前、男性2人に自殺をそそのかした罪で起訴され、信奉者の滝谷奈織被告(59)は、自殺を手助けした罪に問われています。

 これまでの裁判。検察は冒頭陳述で、浜田被告は20年以上前から自らを「創造主」「天使ガブリエル」と名乗り、神が憑依しているとして、救いを求めて来た信奉者に「私はあらゆるものを創造した。お前のことも私が創造した。お前の魂を一瞬にして廃人とすることができる」などと言って、神としての超常的な力が宿っていると思いこませたなどと指摘しました。

 また、滝谷被告ら一部の信奉者らを「神の国のメンバー」と呼び、「創造主」の言葉として、神に財産を捧げるよう申し向け、多額の資金提供を受け、生活費や遊興費などにあてていたとも述べました。

 検察側は滝谷被告に対し、「自らの判断で犯行に積極的に関わり、強い非難に値する。死をあざわらうかのような言動など犯行後の情状も悪質」などと指摘。懲役2年を求刑していました。

■裁判での明かされた実態「完全に心酔しきっていた人間ばかり集まっていた」


 起訴状などによると2020年7月31日、浜田淑恵被告(63)は、信奉者だった寺本浩平さん(当時66)と米田一郎さん(当時51)に対し「本日、決行します」「お互いにコードをつないで入水する」などと述べ、2人に自殺を決意させたとされています。同じく滝谷被告も自殺を決意していて、浜田被告も「みんなで海に入りましょう」と共に自殺する意向を示していたとされています。

 浜田被告との関係は18年ごろ前にはじまったようです。滝谷被告は、『創造主である神が降臨した』とされる浜田被告のパワフル・ユニークで強力なキャラクターに魅了されます。浜田被告から「一緒に暮らさないか」と誘われ、東京から大阪府河内長野市に引っ越したということです。

 9月10日の大阪地裁504号法廷には、白くなった髪を後ろで一つに束ねて眼鏡をかけ、黒のジャケットに黒のシャツ姿の滝谷奈織被告が出廷、被告人質問で以下のやりとりをしていました。

(滝谷被告)「神のみぞ知ることで、指示は絶対命令。そばにいる人達は浜田被告に完全に心酔しきっていた人間ばかり集まっていた」
(弁護人)「金銭面など生活は?」
(滝谷被告)「最初は浜田被告がやっていたスピリチュアルカウンセリングで収入を得ていたが、その後、集まってきたメンバーに財産を寄進させてその財産で生活。浜田被告の金遣いは荒く、あっという間に金はなくなった。浜田被告はメンバーに金を無心してこいと命令し、縁を切った親などにお金を頼みに行くことが頻繁にあった」

 弁護側は罪の成立は争わないとしたものの、浜田被告のマインドコントロールのもとでの行動や言動だったと主張しました。

 24日午後の判決。

 大阪地裁は「死ぬことに躊躇したら互いに沈めあうよう申し向け、溺死させることを幇助するなど果たした役割は相当に重い」としながら、「創造主である浜田被告に従属し、その指示に逆らうことが容易でない心理状態だったことは否定できない」などとして滝谷被告に懲役2年、執行猶予4年の判決を言い渡しました。

■男性の遺族 判決を受けて会見

 判決後、死亡した男性の遺族らが会見を開きました。

 遺族は「今回の判決でとても悲しくなりました。あまりにも刑が軽すぎます。とても非常に残念に思います。」と述べ、会見に同席した弁護士は、「弁護士としても、非常に軽いと考えている。自殺ほう助という罪からすると判決は相当なのかもしれない、しかし本件は殺人事件ではないでしょうか」と、述べました。