開戦前「日本必敗」の予測も…政治システム、メディアの問題点

1941年の日米開戦前、内閣が若手官僚ら精鋭を集め設置した「総力戦研究所」では、「日本必敗」の予測が出ていた。にもかかわらず、なぜ大きな路線の見直しが出来なかったのか、石破総理は会見で“軍人ではなく政治家などによる「文民統制」の原則が、制度上存在しなかった”と指摘した。
そして、「政党間の政権争いが激化し、政党が次第に国民の信頼を失う中、政府は軍部に対する統制を失っていった」と語った。
所感では、石破総理の強いこだわりが見えた部分もある。
それは、戦争の泥沼化を批判し、戦争の目的について政府を厳しく追及して除名処分となった斎藤隆夫衆院議員の「反軍演説」について触れたことだ。衆議院本会議でおこなわれたこの反軍演説は、内容が不適切との理由で、議事録から3分の2近くが削除されているのだが、会見では当時の議会について「軍に対する統制機能としては、予算審議が極めて重要だが、チェック機能を果たしていたとは全く言いがたい状況だった」と指摘した。
石破総理はこの「反軍演説」の議事録への復活に意欲を見せている。
そして、メディアの問題にも言及した。所感では「満州事変が起こった頃から、メディアの論調は、積極的な戦争支持に変わった。戦争報道が『売れた』からであり、新聞各紙は大きく発行部数を伸ばした。日本本土の数倍の土地を占領すると新聞はこれを大々的に報道し、多くの国民はこれに幻惑され、ナショナリズムは更に高まった」と検証している。
今日への教訓 「無責任なポピュリズム」と「偏狭なナショナリズム」に警鐘

石破総理は今回の戦争の検証を踏まえ、今日への教訓として
<政治に対して>
無責任なポピュリズムに屈しない大勢に流されない政治家としての矜持と責任感を持たなければならない
<メディアに対して>
過度な商業主義に陥ってはならず偏狭なナショナリズム、差別や排外主義を許してはならない
などと注文を付け、「過去を直視する勇気、誠実さ。他者の主張にも謙虚に耳を傾ける寛容さを持った本来のリベラリズム。健全で強靭な民主主義が何よりも大切だ」と訴えた。