今年のノーベル生理学・医学賞に大阪大学特任教授の坂口志文さんら3人が選ばれました。坂口特任教授は免疫学が専門で、免疫細胞の活動を調整し過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見。関節リウマチや一型糖尿病、がん治療などへの応用や臓器移植の安全性を高めることが期待されています。

 日本出身の生理学・医学賞は2018年の京都大学の本庶佑特別教授に続き6人目です。
 また、また日本からノーベル賞の受賞者が出るのは去年の日本被団協に続き2年連続で、個人の受賞者はアメリカ国籍を取得した人を含め、4年前に物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんに続いて29人目です。


■所属する大阪大学で会見「非常に驚きでありますし光栄」

 決定時に大阪大学に所属していた研究者としては初となる坂口特任准教授。午後8時から大阪大学吹田キャンパスで会見を開き、喜びを語りました。

 会見冒頭、今の思いを聞かれた坂口さんは第一声で「今回このような形でノーベル賞いただくことになって、非常に光栄に思っています。この間、いろんな方と一緒に研究して、学生諸君また共同研究者の方、いろんな方にお世話になってまいりました。深く感謝しております」と答えました。

 また、受賞決定をうけて最初に抱いた感想を問われると「私たちの研究がもう少し人に役に立つ、臨床の場で役に立つ、もう少し発展してくると、何らかのそういうご褒美があるかもしれないと思いましたが、この時点でこのような名誉をいただくのは非常に驚きでありますし光栄です」と受賞のタイミングへの驚きも見せました。


■石破総理から祝いの言葉 興味が尽きず”直接質問”も

 会見中、石破総理と電話が繋がりました。
 石破総理は「このたびはおめでとうございます。世界に誇る立派な研究をありがとうございました。制御性T細胞などあるわけがないと世のなかの人は思っていたそうですが、先生はなぜそれがあるはずと思ったのでしょうか?」と、祝いの言葉とともに直接質問を投げかけました。

 坂口さんは「そういう細胞はあるという現象を見つけて、たしかに本当にあるということを長年やってきました。それがだんだんはっきりしてきて、人の病気の原因にもなるし、治療にもつながるということがわかってきました。それで今回このような形でそのような成果を認めていただいたんだと思います。ある意味頑固にやってきたことが今日に繋がってきたと思います」と返しました。

坂口さんは石破総理に将来像を説明します。
(大阪大・坂口志文特任教授)「ウイルスとか細菌に免疫反応が起こるように、自分から出てきたがん細胞、異常な細胞に対しても免疫反応が作れる。
もしそれでがんが退治できれば、理想的な治療法になり、そういう方向へ進めるべきだと私たちは考えています」

 石破総理が「そういう夢のような時代は、何年後くらいにくるのでしょう」と問うと、坂口さんは、「20年くらいの間に来るんじゃないかと思います。私は生きてるか分かりませんけど、サイエンスは進んでいきますので、がんは怖い病気じゃなくて治せるものだという時代に必ずなると思っております。」と話しました。

 石破総理は、「政府としても先生方の研究をお手伝いしたいと思っています、ぜひとも先生、あと20年、元気で宜しくお願いします。」とねぎらって、電話を終えました。

■文部科学大臣に直接進言「今後は基礎研究への支援をお願いしたいと思います」

 また、学術研究を所管する阿部俊子文部科学大臣からも祝いの電話が。
「これから文部科学省に必要なことは?」と問われると、坂口さんは次のように答えました。

(大阪大・坂口志文特任教授)「日本の基礎科学に対する支援がだんだん不足しているように私自身は感じます。アメリカや中国と比べると日本の研究費は少なく、同じぐらいのGDPのドイツと比べても免疫の研究資金の規模は1/3ぐらいです。今後は基礎研究への支援をお願いしたいと思います、どうぞよろしくお願いします」

阿部文科大臣は「予算確保につとめますのでどうぞよろしくお願いします」と返しました。

 坂口さんは会見のなかでノーベル賞選出の喜びを語るとともに、たびたび「研究費の獲得が大変だった」と回顧。学術研究を進めるにあたって資金面の支援が重要であることを語っています。 会見の最後では1980年代にアメリカで研究に従事していたことにも触れ、学術研究の未来について思いを述べました。

(坂口特任教授)「日本でも我々は政府からのお金を使うわけですが、アメリカには他にも民間でいろんな支援組織や財団がたくさんありました。それがある意味社会が成熟していくことだと思います。アメリカはいま反対に向かっているかもしれませんが、日本には科学の支援を期待したい」