今週、フランス・パリで開幕した最新のファッショントレンドを発信する「パリコレ」。その鮮やかなランウェイに、障害のある日本人作家が制作を手掛けた衣装が登場。世界から注目されています。

■パリコレに“お面のアーティスト”

9月29日に開幕したパリ・ファッションウィーク、通称「パリコレ」。約110のブランドが参加し、ファッションの最新トレンドを発信しています。

日本人デザイナーの森永邦彦さん。人気歌手・ビヨンセさんの衣装を手掛けるなど、世界を舞台に活躍していて、「パリコレ」には23回目の出展です。

こちらが森永さんの新作。こまやかな線の集合体で、動物たちがいる東京の街が描かれています。

この絵柄を制作したのが23歳の鳥山シュウさん。幼いころ自閉症と診断され、コミュニケーションが難しかったり、強い不安を感じたりすることがあるため、人前で絵を描く時はお面をつけています。

鳥山シュウさん
「このお面をつけて出ないと生活に支障が出るので、このお面のままだったらこういう所に出られるので、このお面をつけています。楽しく穏やかになるような絵を描けたらいいなと思って描いています」

鳥山さんのアートを世に送り出しているのが、クリエイティブ企業「ヘラルボニー」です。

「ヘラルボニー」は自閉症や知的障害などがある作家250人以上と契約し、アートを商品化。収益を作家に還元するビジネスモデルを確立しています。

双子で共同代表をつとめている松田さん。知的障害がある兄と育ち、障害のイメージを変えるための挑戦を続けています。

ヘラルボニー 松田崇弥さん
「美しいという土台に、障がいのある人は乗ってこなかったと思っているので、新しい美しさや面白さが世界に広がるとうれしいなと」

今回、パリコレに参加したヘラルボニーの作家は18人にのぼりました。

ショーを見たフランス人
「形と色づかい、そしてショーの雰囲気が素晴らしく、本当に良かったです」

「詩的な色彩感覚、強いメッセージ性を感じ取りました。ファッション界で新しい才能が開かれるのは素晴らしいことだと思います」

初めてパリコレに参加した鳥山さんは…

鳥山シュウさん
「いま僕がパリにいることは夢のようです。ここで絵を描くことができてとてもうれしいです。たくさんの人にこの服を着てもらって、たくさんの人に僕の作品を知ってもらえたらうれしいです」

■「パリコレ」注目 障害者が描くアート

教育経済学者 中室牧子さん:
私が着ている服も「ヘラルボニー」のものです。「異彩を、放て。」というブランドコンセプトがすごく良いなと思いました。障害を困難ではなく、独自性だと捉える価値観の浸透につながっているのではないかと思い、ずっと応援しています。

小川彩佳キャスター:
独特の色づかい、色彩の鮮やかさがありますね。

喜入友浩キャスター:
「ヘラルボニー」は企業とのコラボも行っています。「エポスカード」や「JR東日本 盛岡支社」とコラボしたラッピング列車も登場しています。

中室牧子さん:
「ヘラルボニー」が一番良いと思うのが、経済的な価値に変える仕組みになっていることです。もちろんアート作品としてのデザイン性の良さもありますが、それにより、福祉的な意味というより、ブランドとして支持を得ているところがいいなと思います。

小川キャスター:
社会に潜む境界線や壁を、軽やかに、しなやかに超えていくような姿勢にすがすがしさを感じます。こうした活動を入り口に、本当に必要な支援につながっていくことにも期待したいです。

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<プロフィール>
中室牧子
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」