JR東日本は列車の運転席に搭載したカメラが障害物を検知する最新システムの実証実験を公開しました。来年度からこのシステムを一部の営業車両に搭載し、運転支援としての実用化を目指すということですが、なぜいま電車の自動運転が必要なのでしょうか?専門家に聞きました。

■JR東日本“障害物検知”の最新システム 山手線“自動運転”の未来は


ホラン千秋キャスター:
JR東日本は列車の運転席に搭載したカメラで障害物を検知する最新システムの実証試験を公開しました。運転台に設置された高解像度カメラ2台が障害物を検知すると、モニターに“危険度”を知らせる画像が映し出されます。さらに障害物に近づくと別の表示に変化。画像を解析してリアルタイムで障害物までの距離も算出します。


JR東日本はこのシステムを来年度から一部の営業車両に搭載し、数百メートル先まで検知できるよう精度を上げ運転支援としての実用化を目指すとしています。


自動運転システムはどこまで進んでいるのでしょうか。JR山手線は現在、1日約550本(ラッシュ時2~3分間隔)の運行です。今年2月には営業時間帯に初めて自動運転のテスト走行が行われました。山手線を2周して、加速・減速、乗り心地、省エネ性能などを確認しました。


導入するシステムは「ATO(自動列車運転装置)」というもので発車時にボタンを押すだけで運行可能になります。これで運転士のいない「ドライバレス運転」の実現を目指し、2028年ごろまでに山手線全ての列車にATOを導入したいということです。


なぜ自動運転が必要なのでしょうか。理由としては人手不足への懸念です。少子高齢化による人口減少で運転士の確保が難しくなる可能性があります。「ドライバレス運転」が実用化すると運転資格のない職員でも運行可能になります。

JR東日本によりますと自動運転などシステム化・機械化できるものを導入していくことで人にしかできない企画業務などにもより力を入れられるようになります。ということです。

鉄道ジャーナリストの方にお話を伺いました。


元東京メトロ広報 鉄道ジャーナリスト 枝久保達也氏
「“自動運転装置”は他の電車などでもすでに採用されているので安全性に問題はないと思います。一方、自動運転で望まれるのが線路上に車や人が立ち入らない環境を作ることです」

山手線内にも踏切がありますし、ホームドア未設置の駅が2駅ありますので、こういったところから車や人が立ち入ると、結局自動運転でも支障をきたしてしまいますので、そういった課題もクリアしていくことが大事だそうです。

井上貴博キャスター:
いきなり全て自動化はできませんし課題もありますが世界で最も少子高齢化が進む日本においてこのシステムは世界的に見ても大きなビジネスチャンスになるのかなと感じています。

米イェール大学 成田悠輔 助教授:
これから日本は1年間に50万人、100万人みたいな範囲で人口が減っていく。世界が一度も経験したことのない人口減少と高齢化を経験すると思います。そうするとあらゆるところで人手不足になりますが、特に足りなくなるのがドライバー産業ですね。タクシーやトラックは自動化することがとても難しいタイプですが、電車のように自動化しやすいところから徐々に行っていくのはごく自然な発想なのかなと。

井上キャスター:
ヒューマンエラーはゼロにならないし、居眠り運転などもありますから、そういったところを補完していくという考え方もありますよね。

米イェール大学 成田悠輔 助教授:
注意すべきなのは人間が間違いを犯してしまうことがあるのと同じように、自動運転の機械も間違いを犯す可能性は残り続けることを認識しておくことが大事だと思います。
何かトラブルが起きたときに、人間はパニックを起こしがちですが、自動運転はその小さな間違いを起こしながらトライアルアンドエラーで少しずつ良くしていく。そういう形で徐々に世の中に浸透していくんだという認識を持つことが大事ですね。