スキマ時間を活用して働く“スポット保育士”がいま広がっています。柔軟な働き方が注目される一方、子どもの命を預かる現場ならではの悩みも見えてきました。
スキマ時間活用 “スポット保育士”
神奈川県藤沢市にある保育園。1日に200人以上の子どもを預かる“マンモス園”です。

0歳児のクラスで子どもをあやしているのは保育士の中村由季さん。実は週に1、2回ほど勤務する“スポット保育士”です。
単発の求人と働き手を繋ぐスキマバイトアプリを使い、2025年4月からこの保育園で働き始めました。

スポット保育士 中村由季さん
「短時間で入れるところを私は逆に優先的に選ぶようにしています。居心地がいいというか、先生たちの気遣いだったり、保育の魅力を感じているので繰り返し来ています」
起きてきた子どもたちと慣れた様子で遊ぶ中村さん。それもそのはず、保育士歴20年以上のベテランです。

スポット保育士 中村由季さん
「(保育士以外の)新しい仕事を始めたんですが、やっぱり保育士っていう魅力っていうところもまだ感じているので、この4月から、合間を見ながら両立しています」
この園では、50人以上の保育士が在籍していますが、人手が手薄になる時間帯を中心に、“スポット保育士”の力を借りています。これまでに利用した人数は100人近くに上ります。

キディ湘南CーX 戸島翔平園長
「頻度としてはほぼ毎日いずれかのワーカーさんが来ていただいております。平均すると1日に2~3人っていうところ」
そのなかには“スポット保育士だからこそ復帰できた”という人も。

スポット保育士 越田祐加さん
「(自分の)子どもメインの生活っていうのが、今は自分の生活のベースになっているので、そうなると決まった日に行くっていうことでは難しいところがあって」
越田さんは約10年間、幼稚園の教諭として働いていましたが、結婚を機に退職。その後、子育てが落ち着いてきたことをきっかけに、現場へ復帰しました。
スポット保育士 越田祐加さん
「すごく新しい時代の新しい働き方っていうので、私はすごく自分に合ってるなと思う」

キディ湘南CーX 戸島翔平園長
「スポット保育士の働き方は、潜在保育士さんたちがまた現場に戻ってくるための手段の一つだなっていうのはすごく痛感をしております」
命預かる現場…“スキマ”悩みも
しかし、こうしたスポット保育士には課題も…
普段から園で働いている常勤保育士たちに負担が集中しやすくなっていると、保育学の専門家は指摘します。

保育研究所所長 村山祐一さん
「スポット保育士を活用するためには、常勤保育士の指導のもとでやらなくちゃならないっていうのがまず第一。常勤保育士がスポット保育士を活用できるゆとりがないと駄目」
こうした指摘を踏まえ、先ほどの保育園では、保育士たちが互いに気持ちよく働けるよう独自のルールを設けています。

キディ湘南CーX 戸島翔平園長
「子どもたちを見ているのがスポット保育士だけということは絶対ないようにしています」
園では、業務に関するマニュアルを作り、作業内容も常勤保育士のサポートに限定しています。さらに、履歴書などを通じて、過去に問題を起こしていないかも確認しています。

保護者
「正直そんなに厳格な審査を経て働いているっていうことを知らなかったので、そういったことを知れて、とても安心できる材料にはなりました」
保護者
「ちゃんと今まで対応してくれた保育士の方も、一緒に付き添って見てくれるっていうのは聞いてますので、大きな不安感はないかな」
一方で、“スポット保育士”だからこそ、子どもたちと向き合う際には、より慎重になるとの声も聞かれます。

スポット保育士 中村由季さん
「スポットで入る分、その日に入って『目の前の子をお願いします』と言われて扱うっていう部分では、今まで所属してたとき以上に、やっぱ責任と難しさと気の遣い方っていうところは感じています」

スポット保育士 越田祐加さん
「やはりお子さんの命を預かるという仕事なので、そこの責任っていうのは、スポットであれ、常勤であれ、パートであれ、変わらないと思って私はやっている」