山小屋管理人が悔やむ、伝えられなかった警告
報告
「担架に乗せられた人でしょうか。いま道警のヘリに吊り上げられています」
この地に、衝撃が走ったのは8月のこと。羅臼岳に友人と登山に来ていた東京に住む26歳の男性が、下山中にヒグマに襲われ死亡しました。
2005年の世界遺産登録後、初めてとなるヒグマによる死亡事故。事故が起きた登山道の入口は、9月末現在も閉鎖されたままです。
事故当日も登山客を見送っていた山小屋の管理人。一つ後悔していることがあります。

羅臼岳の山小屋管理人 四井弘さん
「問題行動、『逃げないクマがいる』という情報はあったから、そういう情報はそれぞれ朝登っていった人たちには伝えていたんだけど、たまたまクマスプレーのレンタルの仕方を(他の客に)説明していて、肝心要の彼ら(被害者)には伝えられなかった」
現場付近では母グマと子グマ2頭がハンターによって駆除され、DNA検査の結果、母グマが男性を襲ったことが分かりました。

男性を襲った11歳の母グマは、人に出会っても逃げない個体で、知床財団はこれまでに追い払いを度々行ってきました。
知床財団 玉置創司 事務局長
「今年だけで30回くらい目撃されている個体。人を恐れない個体であるというのは間違いない。昔のクマだと人を恐れて、人になるべく姿を見せないというのもあるが、このクマは特にそういう状況が見えなかった」
財団からは「SH」という識別コードで呼ばれていたこの母グマ。出没していた地名から、いつしか「岩尾別の母さん」という愛称で知られるようになりました。