自分にできる恩返しとは・・・

8月15日。「中田翔、現役引退」の一報が届いた。

その時こみ上げてきた感情は、「寂しい」だった。でもそれ以上に中田さんを最後まで応援するのが自分の仕事だと思った。ディレクターとしても、いちファンとしても。

9月15日、中田さんが二軍で最後の試合に出るらしい。その日休みだった私は仕事抜きで、ナゴヤ球場へ足を運んだ。一軍での引退試合は別の仕事で見に行けないことがわかっていた。私は、ただのプロ野球ファンとして"中田翔"の最後の姿を自分の目で見たかった。

その試合、中田さんはショートフライに倒れた。でもフルスイングを見せてくれた。平田良介コーチから花束を受け取り、ベンチに帰る背番号6の姿はどこか晴れやかで、私の中にもこみ上げてくるものがあった。

確かに第一印象はすごく怖かった。だけど、名前も知らない若手ディレクターに気さくに話しかけてくれたり、取材をねぎらってくれたりしてくれた。それも球界を代表する超一流の「中田選手」がだ。そんな選手は他にもいるのだろうか、まだ2年目の私にはわからない。

私は今の仕事をすごく楽しいと感じている。中田さんのような、取材していて心奪われる選手のことを、視聴者に届けられるからだ。そう思わせてくれた人が球界を去る。

これからも中田さんと関わる機会はないだろうか。指導者か、解説者か、はたまた別の何かかもしれない。そうだ、まだチャンスがあるうちに、最後に取材がしたい。「中田さん、今後は何をされますか?」。

それでもきっと言われるんだろうなぁ。

「お前誰や、なんでお前に言わなあかんねん」