全国の道に特化したバラエティ番組『道との遭遇』では、道マニアがイチオシの道を紹介。今回は、奈良県にある未完成の道“未成道”から歴史を紐解きました。(この記事では道情報だけをまとめてご紹介します)

一度も使われなかった未成線の遺構

「奈良県五條市は、昔から交通の要衝」と道マニア。大阪をつなぐ「河内街道」や、三重へと続く「伊勢街道」など、5本の重要な街道が集まる要衝で、一説には「五條」の名の由来と言われています。

そんな五條市には、鉄道用に造られたアーチ橋の遺構が存在。昭和14年、人々や木材などを輸送するため、五条から和歌山県の新宮までを鉄道で結ぶ「五新線」の工事が着工されました。

しかし、急峻な山地を貫くトンネル工事の難航や莫大な建設費用により、昭和57年に計画は中止に。五新線は開通することなく、未成線となりました。かつては川の中に建てられた巨大な橋脚も、しばらくは遺構として残されていたそうです。

五新線の線路が敷かれるはずだった道は、鉄道開通までの間、バス専用道路として使われていた歴史も。

五新線の工事着工から20年後に、五条から城戸(じょうど)までの区間の路盤工事が完了。地元の人達からの強い要望で、鉄道が開通するまでの間、この区間をバス路線として活用することになりました。

鉄道工事が中止になってからもバス専用道路として使われていましたが、平成26年に利用者減少によりバスの運行も廃止となりました。

現在、終点「城戸」と「賀名生(あのう)」を結ぶ約4キロのバス専用道路が遊歩道になっており、昭和54年竣工の「黒渕トンネル」など一度も鉄道が走ることのなかった4つのトンネルも歩くことができます。