中東のシリアで、独裁的なアサド政権が去年12月に崩壊してから、まもなく1年となる。旧政権下で科せられたアメリカや日本などによる経済制裁の一部解除が進み、内戦からの復興に向けた期待が広がっている。
こうした中、いまシリアではアニメや漫画など、日本文化が大人気だ。
日本アニメや漫画が人気 交流も活発に
漫画を手に取り、アラビア語で「『バガボンド』は最高の漫画です。絶対みなさん読むべきです」と熱く語るのは、日本のアニメや漫画を愛し、自らを“オタク”と称するラフマンさん(22)だ。
ラフマンさんによると、シリアでは内戦が始まる前から、衛星放送を通じて『ドラゴンボール』や『ワンピース』など日本のアニメが放送され、多くの人々に親しまれてきた。近年は、特に若者の間でSNSを通じて、日本アニメや漫画の最新情報をアラビア語で発信する投稿が増え、ファン同士の交流も活発になっている。これにより、日本コンテンツの人気はさらに高まっているという。
シリア国内では日本のアニメ専門の上映館が登場したほか、アニメや漫画のファンによるオフ会も開かれるようになった。好きなキャラクターを一緒に描くといったイベントなども、時折開催されている。
“くじけない心に共感” 『鬼滅の刃』がシリアで大人気
ラフマンさんは、日本のアニメや漫画にハマりすぎて、シリアでグッズ販売を生業にしている。一番人気の商品は、『鬼滅の刃』のグッズだというが、『鬼滅の刃』は特に若者を中心に高い支持を集めていると話す。その理由についてラフマンさんは、主人公の炭治郎がどんな困難にもくじけず、強くなりながら前に進んでいく姿が、「内戦が終わり、これから復興に向けて歩きださなければならない私たちシリア人の心に響くから」と強調した。
『鬼滅の刃』に限らず、日本のアニメや漫画に共通して描かれる、「仲間と力を合わせながら困難を乗り越え、成長していく主人公の物語」は、多くの若者にとって日々の苦難を乗り越えるための原動力になっているという。
シリアでは長年の内戦の影響で、住まいや水道設備といった基本的な生活基盤さえ整っておらず、人々の暮らしは厳しい状況にある。今年の夏は40度近い猛暑が続いているが、停電は日常化しており、電気が使えるのは1日あたりせいぜい3時間ほどとのこと。
そんな過酷な日常の中、若者たちは『鬼滅の刃』をはじめとした日本のアニメや漫画に、困難に立ち向かう勇気や、前に進むための力を見いだしている。














