“人口ボーナス”の南アジアで相次ぐ政変

ネパールに限らず、南アジアでは近年、政変が続いている。スリランカでは2022年、深刻な経済危機による抗議デモが拡大し、当時のラジャパクサ政権が崩壊。バングラデシュでも2024年、公務員採用の特別枠をめぐる学生デモが激化し、強権的な政治を続けていたハシナ前首相の長期政権が倒れた。

南アジアの外交・安全保障が専門の防衛大学校・伊藤融教授は、これらの国々に共通する要因として「若者が多い人口構造と深刻な雇用問題」を挙げる。

防衛大学校・伊藤融教授
「南アジアはどこの国を見ても人口ピラミッドがきれいな富士山型になっていて、若い人たちが圧倒的に多い構成になっている。ただ、国が製造業などの雇用創出を整備できておらず、若者たちの就職先がない状況で特定の層に牛耳られている。こうした厳しい現実が政治不信につながり、若者たちの間に絶望感が広がった。不満が高まった若い人たちのエネルギーは侮れず、先進国のアメリカや日本ではみられないような現象が起きた」

伊藤教授はまた、南アジアのほかの地域でも同じような政治体制の転換が起きる可能性は否定できず、特にパキスタンは「既存の政治に対する若者の不満はかなり溜まっていて、軍が力ずくで何とか抑え込んでいるが、政治的に不安定で危ない状況だ」と指摘する。

「学生革命」や「Z世代運動」といったセンセーショナルな動きが注目されるが、各国の新たな指導者はどのように政治と経済を立て直していくのか。それぞれの国の未来を左右する改革が今後の大きな焦点となる。