繰り返される悲劇 ストーカー事件 遺族の願い
警察がストーカー被害の相談を受けながら、被害者が命を落とすケースは後を絶ちません。

猪野詩織さんの父 猪野憲一さん
「こういうことが起きると、第二の詩織と同じことなんです。やっぱり、すごく辛いんです」
猪野憲一さんの娘で、当時大学生だった詩織さん。1999年、埼玉県桶川市の駅前で殺害されました。
詩織さんや家族は、警察に元交際相手らからのストーカー被害を繰り返し相談していたにもかかわらず、犯行は止められませんでした。
猪野詩織さんの父 猪野憲一さん
「(彩咲陽さんが)20歳だと聞いたときから、ほとんど詩織と変わらないと思った。変な意味での親近感みたいなものがあって、『生きたい。遊びたい。楽しみたい』という命を奪ってしまったんだから、当然、許されることでは全然ない」
詩織さんの事件は、警察の対応が不適切だったとして、ストーカー規制法が成立するきっかけとなりました。憲一さんは、この26年間、悲劇が繰り返されないよう、全国で講演を重ねてきました。

猪野詩織さんの父 猪野憲一さん
「警察がしっかりしなきゃどうしようもない。彩咲陽ちゃんのためにも、二度と同じことが起こらないように、全国足を揃えて、改革に取り組んでほしい」
警察庁は5日、全国の警察本部にストーカーに対応する司令塔役の幹部を設置するよう通達を出しました。
これまで警察庁は、加害者にカウンセリングや治療を受けるよう働きかけてきましたが、実に9割が受診を拒否しています。
斎藤幸平さん「警察官に男性が多いことも…」 必要な改革とは?

小川彩佳キャスター:
「加害者の9割がカウンセリングや治療の受診を拒否」というのは、ショッキングなことです。再発防止ができるのでしょうか。
警察庁は、新たな体制の構築を指示したということですが、これで本当に、次に起きてしまうかもしれない、取り返しのつかない展開を防ぐことができるのか、不安を覚えます。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
ストーカーや性加害の問題を、「警察がきちんと調べてくれない」という声は、さまざまなところで聞きます。
こういう問題が繰り返されてしまう背景には、どうしても警察官は男性が多いと思いますので、男性の視点では『カップルの喧嘩だろう』と、問題を過小評価してしまう部分があるのかもしれません。
警察官がしっかりとした研修を受けることや、警察官の女性の割合を増やしていくことも考える必要があると思います。
これ以上、同じ問題を繰り返してほしくないですね。
<ストーカー被害相談窓口>
▼警察相談専用電話 #9110
▼女性相談支援センター #8778
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
著書『人新世の「資本論」』