川崎市でストーカー被害を訴えていた女性が殺害され、男が逮捕・起訴された事件。警察が当時の対応を検証し、「必要な措置を講じてきた」としてきたこれまでの見解を翻して謝罪しました。
和田薫 神奈川県警本部長
「不適切な対応について、深くお詫び申し上げます」
陳謝した神奈川県警の和田薫本部長。明かされたのは、“杜撰な”警察の対応でした。
川崎市の岡崎彩咲陽さん(20)。去年12月、元交際相手の白井秀征被告(28)からのストーカー被害を警察に訴えた後、行方不明になり、今年4月、遺体で見つかりました。白井被告は殺人などの疑いで逮捕され、その後、起訴されました。
神奈川県警は当時の対応を検証、問題点が明らかになりました。
【拙速な捜査の終結や警告】
去年10月、岡崎さんが姉のマンションにいた時のこと…
岡崎さん
「居間の扉を開けると、廊下に白井被告がいた」
防犯カメラには白井被告がフェンスを乗り越えて敷地に侵入する様子も写っていました。
しかし、川崎臨港署は当事者たちの話し合いの結果などから事態が沈静化したと判断、本格的な捜査を行いませんでした。そして、去年11月、川崎臨港署は対応を終結させると判断。
検証結果では、この判断でトラブルが一旦解決したという先入観ができ、その後のさらなる不適切な対応につながったと考えられるとしています。
【9回の電話への不適切な初動対応】
親族が保管した岡崎さんの通話記録。岡崎さんは去年12月、行方不明になる直前に「白井被告がうろついている」などと川崎臨港署に9回電話していました。
しかし、担当した警察官全員が危険性・切迫性を過小評価し、報告のみならず、記録も怠り、組織的な対応をしていませんでした。
【行方不明後の不十分な初動対応】
岡崎さんが行方不明になった直後、祖母が「窓ガラスが割られている。岡崎さんと連絡が取れない」と通報しました。
しかし、現場に向かった署員は写真撮影などの当然行うべき鑑識作業を行わず、事件性が低いと判断。理由について神奈川県警は…
「鑑識活動に必要な道具を忘れたため」
検証結果では部署間の情報共有が不足していたなど問題点を指摘、本部長のほか、署長や捜査関係者、あわせて43人が処分を受けました。
亡くなった岡崎さんの祖母・須江子さん。
岡崎須江子さん
「死んだのが12月20日じゃない。もう12月で一周忌ですよ。(Q.ここまで長かった?)長いですよ。だって本当に、どんな思いで私たちがね」
孫の命を救えなかったことが悔しいと、きょう改めて話しました。
岡崎須江子さん
「守ってあげられなかった、ストーカーを甘く見てたって。それだけは一生消えない。これを機に、少しでもストーカーをめぐる警察の対応が変わってくれればいいなと」
岡崎さんの父・鉄也さんは先ほど開いた会見で…
岡崎鉄也さん
「警察全体の体制が変わっても、法律が変わっても、人間性が変わらなかったら、多分同じことが何回も繰り返されると思います。彩咲陽も何回も電話してSOSを出していたので、多分そういう人たくさんいると思うんで、どんな小さいことでも真剣にちゃんと向き合って話を聞いてあげて、そういうことをしっかりやってほしいです」
警察庁はきょう、全国の警察本部にストーカーに対応する「司令塔」役の幹部を設置するよう通達を出しました。
また、これまで警察庁は加害者にカウンセリングや治療を受けるよう働きかけてきましたが、9割が受診を拒否。事態を打開するため調査研究を行うとしています。
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