「起きないぞ」で、少しずつ水量を増やし…

現場の「崖」は、散水によって水分を含むことで、もっと「マイルドな崖崩れ」を起こすはずでした。しかし、丸1日散水しても、なかなか崖崩れは起きません。「何も起きないぞ」とじりじりした雰囲気の中で、実験は少しずつ水量を増やしていきました。

研究者、報道陣が見守る中、散水(赤枠内)の水量はだんだん増えていきました。

そして、散水開始から3日。
総雨量が470ミリに達したとき、轟音とともに斜面は一気に崩れ落ちたのです。

予想外の「大災害」に

崩れた土砂の量はおよそ270立方メートル。秒速17メートルという猛スピードで流れ下り、防護柵を押し倒して池にまで達しました。想定をはるかに上回る規模でした。

実験現場の断面図。崖崩れは標高80m弱から50m弱、約30mの高低差を滑り落ちることになりました。

この崩壊により、研究者や報道関係者あわせて25人が巻き込まれ、15人が死亡、10人が重軽傷を負いました。事故の瞬間はカメラが記録しており、衝撃的な映像とともに全国に伝えられました。その連続写真がこれです。

崖崩れはあっという間に上部柵(青丸部分)付近を乗り越えて進みました。