通常の法廷で行われなかった裁判 なぜ?
(井上雅雄弁護士)
「法廷は公開の原則がありまして、みんなが見ることができる状況=公開された法廷で裁判しなきゃいけないっていうのがあるんですけども、菊池事件だけでなく、ハンセン病の元患者の方々が事件を起こした場合は、昭和の結構ある程度遅い時代まで、通常の法廷では裁判が行われていませんでした。
ある事件で法廷は刑務所の中の会議室で開かれた。それから療養所の中でも開かれた。すなわち、公開されない状態で、法廷が開かれるということがよく行われています。
裁判の公開の原則というのは、憲法上の原則ですので、当然どの弁護士も知っていますし、裁判官、検察官も知っているのですが、そういう特別法廷というものが開かれました。
被告がハンセン病であるという1つの理由だけで、特別法廷を開くということがずっと行われてきたということになります。
特別法廷について、2016年に最高裁が、ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書というものをまとめ、重大な問題があったということで、謝罪をするということが起きています。
本来であれば、この特別法廷で死刑判決を下されて死刑を執行されたっていうことについて、こういう風に問題があったという最高裁まで認めた状況なのです。
ですから、菊池事件に関しては、再審が当然のごとく行われなければいけないのですが、親族の方がなかなか立ち上がることができない。差別偏見を気にして、立ち上がれないという状況がずっとありました」