豊島区椎名町(現長崎1丁目)その一角は現在では普通の駅近住宅地です。かつてここで凄惨な集団毒殺事件がありました。
それは戦後最大の冤罪事件かもしれません。元死刑囚が死去した後も、今なお謎のままなのです。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)*文中一部敬称略
舞台は「帝国銀行・椎名町支店」
1948年1月26日午後、東京・豊島区の帝国銀行椎名町支店で、12人が命を落とす前代未聞の毒殺事件が発生しました。
白衣を着た男が支店を訪れ「厚生省からの指示で赤痢の予防措置を行っている」と騙り、職員とその家族16人に紙コップで液体を飲ませたのです。

男は医療関係者を思わせる言動で全員を信用させましたが、配られた液体は猛毒の青酸化合物でした。
謎の人物は何も残さずに逃走した
薬を飲んだ直後、次々と倒れる行員たち。男は混乱の中で金庫の鍵を奪い、現金と預金通帳を持って逃走しました。犯行時間はわずか20分。男は誰にも気づかれることなく、現場から姿を消しました。

警視庁はこの事件を「帝銀事件」と名付け、捜査本部を設置。現場の目撃証言や似顔絵をもとに捜査を進めました。なお、帝国銀行は現在の三井住友銀行およびみずほ銀行の前身にあたります。
