日本でも“リベラル離れ”?
藤森キャスター:
JNNが週末に行った世論調査を見ていきますと、各党の支持率の順番が上から自民、参政、国民、立憲は4番手というかたちですよね。

小川彩佳キャスター:
攻めの姿勢が足りないという、斎藤さんが今おっしゃっているようなことがあるのかもしれないですけれども、日本でリベラル離れが起きているのか、その辺りは斎藤さんどうですか。
斎藤幸平さん:
これ世界的な流れでもあるんですけれども、トマ・ピケティというフランスの経済学者が言っていますけど、今リベラル政党というのが、環境問題であるとかLGBTQの問題みたいな、もちろん重要な問題だけど、どちらかというと都会のエリートの人たちが関心を持つような問題ばかりを扱うようになっていて、いわゆるマイノリティではないけれど今の生活、社会がちょっとしんどいなというふうに感じているような労働者階級のことを見捨てるようになってるんじゃないか、という批判を彼はしているんですね。
そういう意味でいうと、今すごい伸びてる参政党なんかは、保守的なモチーフを使ってリベラルを批判しながら、国民の不満をすくい出して、例えば「反グローバリゼーション」とか、「反緊縮」「反小さな政府」みたいな形で、人々の不満をうまく自分たちの支持に繋げてるなという印象はありますね。
小川キャスター:
その「反グローバリゼーション」「反緊縮財政」「反小さな政府」というところで言うと、斎藤さんがいらっしゃったドイツでは極右政党が一気に伸びたんですよね。
斎藤幸平さん:
これは「反移民」ですよね。参政党なんかとも似ていると思うんですけど、ドイツで今起きてることは、1回こういう政党=極右が伸びてくると、いわゆる普通の政党=キリスト教同盟など政権を持ってる政党なんかも、自分たちもあいつらの言ってることを真似しなきゃとなって、批判しながらも実はどんどんそこに寄って行ってしまう、政治の軸がやっぱり全体として右へ右へとなっていってしまうのが、私なんかは外国人として暮らしていて凄く不安でした。

小川キャスター:
それが今後、日本で起きていく可能性というのはどうですか。
斎藤幸平さん:
これはドイツだけじゃなくフランスとかアメリカを見ていても、ポピュリズムで極右の政党が伸びるときは、実は同時に左のポピュリズムも伸びているということです。いわゆる極左も伸びている。
特にドイツでは左翼党という政党が今回2月の選挙で伸びたんです。だから右も左も伸びる。つまり真ん中が信用できないからポピュリズムに行く。ただ日本の場合は、左のポピュリズムっていないんですよね。
例えば共産党とか社民党なんかも、どちらかというと高齢化が進んで支持率もどんどん下がっているという状況。そこで私が心配なのは、こういう状況になると、例えば「反移民」みたいなポピュリズムがどんどん伸びてくると、それを止めるような、歯止めとしての左の政党がいない中で、右のポピュリズムばかりが伸びてしまうことで、一気に行ってしまう。
そういう中で私たちが本来もっと考えなければいけない少子化の問題、気候変動の問題、あるいはアベノミクスの負の遺産をどうするかとか、そういう問題はどんどんどんどん後退していってしまう、時間が失われていく、日本経済がもっと沈没していく、そういうことを危惧しています。

藤森キャスター:
いま既存政党が自分たちの党のあり方の見直しをやっている中で、その見直しの仕方というのが、どういう方向に進むかというのも注目しなければいけませんよね。
斎藤幸平さん:
そういうのが無いまま、自民党も党内で権力闘争をやっているというような状況になってしまうというのが残念です。
小川キャスター:
ただ、これはいま突然起きたことではなくて、これまで受け皿が見つからず、鬱積し続けてきた不満や不安というのが一気に噴出した結果だというふうにも感じますから、これを与野党含めてどう向き合っていくかですよね。
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〈プロフィール〉
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
ドイツ在住 著書『人新世の「資本論」』