「みんながつないでくれたボール、責任をもって決めようと思った」

すると39分、サンガが一瞬のチャンスをものにする。上福元選手からのゴールキック、中盤の選手が競り勝って前にボールを運ぶと、前を向いてボールを受けたキャプテンの松田天馬選手が、うまくディフェンスの背後に回ったFWの豊川雄太選手へ、絶妙のループパス。豊川選手は、ゴールキーパーが飛び出してくるところを、冷静に浮かせて、ゴールに流し込んだ。

「みんながつないでくれたボール、責任をもって決めようと思った」と豊川選手が語った一撃。これぞ、まさにJ1。決めきる力をみせつけて、京都が先制点を奪った。

ここから試合は、京都ペースに。サイドが変わった後半も、45分、50分、55分と立て続けにチャンスを作り出していく。ところが、「勝ちたいという気持ちが強すぎて、ミスが多かった」と曺監督が語ったように、大事なところで追加点が奪えない。

すると57分、大木監督が動いた。FWの坂本亘基選手に変えて、ターレス選手を投入。ターレス選手の強引な突破を軸に、徐々にサンガを押し込んでいく。ロアッソの武器であるコーナーキックのチャンスを何度もつくりだしていった。

そしてつかんだ68分のコーナーキック。キャプテンの河原創選手の精度の高い早いボールに、DFのイヨハ選手がニアで合わせて、ついに、京都サンガの固いゴールをこじ開けた。これで1対1。それでもまだ同点、昇格の為には、勝利が必要なロアッソは、勢いに乗って、さらに攻勢を強めようとする。

その空気を肌で感じたホームチームのサポーターが、会場のムードを変えていく。一段とヒートアップした声援で、サンガの選手たちを後押し。すると、今度は京都ベンチが動いた。曺監督が、「あらかじめ、こういう展開になることも想定していた」と語ったように 直後の70分、3人の選手を交代。

ターレス選手への対応として本多勇喜選手を投入、ディフェンスの枚数を増やすと、前線には、単独でも突破ができるピーター・ウタカ選手を送り込んだ。この交代で、より戦い方が明確になったサンガ、一気に攻めてくるロアッソの勢いを止めると、一人一人が体を張った粘り強い守備で対応。落ち着いた試合運びで、熊本に大きなチャンスをつくらせないまま、試合は、ロスタイムに突入していく。それでも勝利への執念を見せるロアッソは、リスク覚悟で人数多をかけて攻め込んでいく。残り時間わずかなところで、ついにコーナーキックのチャンスをつかんだ。