「『今も生きている』と思わなければ、平静を保って生きていけない」

白石の死刑執行を、被害者の遺族はどう受け止めているのか。6人目の被害者となった高校3年生の娘(当時17)を亡くした父親(70)が、福島市の自宅で取材に応じてくれた。
父親は、白石に死刑判決が出た時の取材で、「死刑になって欲しくない」と答えていた。その気持ちは、死刑が執行された今も、変わらないという。
「死刑になることは、『逃げ』だと思うから。罪と向き合って生き続けて欲しかった。事件を起こしたことを後悔させてやりたかった。反省して最後まで生きることが、遺族への償いになったはずだ」
そう悔しそうに語る父親は、あるものを見せてくれた。
「娘が使っていた食器。今も残したままにしているんだよね」
娘が幼少期に使っていたというプラスチック製の食器には、娘が好きだったキャラクターが描かれていた。小さいころから絵を描くのが好きで、将来はアニメに関わる仕事をしたいと話していたという。そんな娘が事件に巻き込まれ、突然いなくなった。「犯人も事件現場も見ていない。娘の死に目にも会えていない。だから、ずっと海外留学をしているような感覚」。そう言って、寂しそうに笑った。
それでも、ふとした時に、現実を突きつけられることがある。生きていれば、25歳。テレビで女性のタレントを見た時や、通院している病院で看護師の若い女性と接した時に、娘と重ね合わせてしまうという。
「同じ年ぐらいの女の子を見ると、娘だと思ってしまう。結婚して子どもがいれば、このぐらいの子どもがいるのかなって。だから、若い女の子と接すると、優しくしてしまうんだよね」
そう言って静かに泣いた父親は、絞り出すように正直な気持ちを吐露した。
「『娘は今も生きている』と思わなければ、平静を保って生きていけない」
遺族の苦しみは、今も続いている。