名前を知らない被害者が求めたこと「『殺してくれ』と言う人はいなかった」

9月30日の初公判で、白石は起訴内容の全てを認めた。裁判では事件の経過が明らかとなり、被害者のなかには、白石と出会って数時間も経たずに殺害された人もいた。
ある日の面会で、白石はこんなことを明かしていた。
「被害者の名前ですか?一人目の女性は、部屋を借りるときに免許証を見せてもらったけど、ほかの人は殺害前は知りませんでした。殺して、荷物を漁っているときに、免許証とか生徒手帳とかで、初めて知りました」
殺害された9人は、何を求めていたのか。
「9人は『何か』を求めていたのだと思います。『何か』って、言葉で説明ができないんですけど、『死にたい』とか言っているけど、そうではなくて。記者さんが言う通り、誰かに話を聞いて欲しかったんだと思う。『死にたい』と言っている人になぜ?って聞くでしょ。答えは『寂しいから』が多かった。『なんで寂しいの?』と聞くと、『友達がいないから』とか『人と会うのが苦手だから』だと。じゃあ『僕が友達になるよ』って、話を聞いてあげていた。だから、『殺してくれ』と言う人は、一人もいませんでしたよ」
裁判では、白石の主張と弁護側の主張が食い違っていた。起訴内容の全てを認めた白石の主張とは違い、弁護側は、被害者は白石に殺害を依頼したという「承諾殺人」が成立すると主張した。白石は、この食い違いを気にしていた。
「争っている感じに見せたくない。遺族からすると『死にたくない(死刑になりたくない)のか』『罪を認めないのか』と思われるじゃないですか。そんなのは嫌なんですよ」