瀬戸内市牛窓町で、誤って海に転落した94歳の男性を救出した親子が、玉野海上保安部から感謝状が手渡されました。

「あと数分遅かったら」という状況で、救出した親子がとっさにとった行動とは。

■94歳の男性は「岸壁」と「船」の隙間に転落した


(リポート)
「転落事故があったのは、20隻以上の漁船が出入りする、牛窓のこちらの港です。釣りに行くため船に乗ろうとしたところ、誤って海に転落したということです」


94歳の男性が転落したのは、「岸壁」と「船」の間でした。94歳の男性は首から下が海に浸かっている状態だったといいます。

■必死にロープにしがみつく94歳の男性 あと5分遅かったら...


(息子・濵田湧斗さん(26))
「岸壁に船をつなぐための、『黄色のロープ』にしがみついている状態。上のおじいさんを、そばにいたおじいさんの息子が、一緒に水に浸かりながら支えているような状態でした」

「おじいさんは手を離してしまったらそのまま沈んでしまうので、必死にロープにしがみついているような状態でしたね」


(父親・濵田直樹さん(49))
「『あと5分ぐらい遅かったら、やばかったかな』という感じでしたね。おじいちゃんの方が」

■「助けてくれ~」その時、塗装作業中の濱田さん親子が駆けつけた

11月2日の午前9時ごろ、現場から約20mほどの実家で壁の塗装をしていた濵田さん親子は、助けを求める声に気が付きました。


(濵田直樹さん)
「『助けてくれ』と息子さんが大声で叫んでいたので、何かあったんだろうと」


二人が駆けつけると、海に転落した男性が。船に乗り込もうとして足を滑らせたことが原因です。

■手で引き上げようとして互いの手が滑る・・・その時、ひらめいた


「『手で引き上げるような感じ』で救助したんですけど、手が滑って上らなかった」

「なので脚立を取りに帰って、高さ3m60cmの脚立を海底に刺して、はしごのような感じにして、渡ってもらって上ってもらう感じに」


塗装業を営む濱田さん親子。仕事で使用する「脚立」が命綱となり、男性を救いました。

当時の海水温は21度と低く、救助が遅れていれば命の危険もあったといいます。


玉野海上保安部管内では今年、既に8件の海中転落事故が発生。その多くが高齢者の不注意によるものだといいます。濱田さん親子には、海上保安部から感謝状が贈られました。


(玉野海上保安部長 長澤宏樹 宇野港長)
「迅速な救助活動で、転落者を引き上げ無事救助されました」


(濵田直樹さん)
「絶対に助けないといけないな、と思ったのでよかったです、助かって。みんな、気を付けてもらいたいと思います」


(濵田湧斗さん)
「同じことが起きたときに、同じように冷静に対応できたらなと思います」


(玉野海上保安部長 長澤宏樹 宇野港長)
「尊い命が、迅速な活動により救助されたことは、非常に嬉しく感じております」


「今後、冬になってくると水温も下がってきて、救助する側の二次災害も考えられますので、お二人で救助するのは非常に良くて、まずは声掛けして、周りの人に助けてもらいながら救助することをしていただければ」


冷静な親子の対応が命を救った今回の事故。海上保安部では、「海では最善の注意を払ってほしい」と話しています。