2009年にデビューし、聴く人に寄り添うような繊細なメロディーを、時に叙情的に、時にポップに奏で続けてきたロックバンド「androp」。そのフロントマンで、楽曲提供などでソロとしても活躍する内澤崇仁が、自身初となるテレビドラマ劇伴音楽を、金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系)で手がけている。

出会いは13年前。「絶対に、内澤さんしか考えていなかった」と全幅の信頼を寄せ、熱烈オファーを出したのは、本作でプロデュースを務める長谷川晴彦。劇伴では、異能力を引き出す新型ドラッグ「DOPE」や、複雑に絡む人間模様など、本作を取り巻く難しいテーマに内澤が挑み、30曲以上にわたる傑作を完成させた。

今回、これまでにも数々の作品で親交を深めてきた二人が、その思いを交わし合うロング対談が実現。前編では、会心の出来となった劇伴の詳細を含め、二人の出会いからオファーの裏側、レコーディング秘話などに迫る。

出会いはバンド初期のMV 「長谷川さんは“妥協のない人”」

長谷川:2012年にandropさんのMV『End roll』に僕がプロデューサーとして携わったのが内澤さんとの出会いなのですが、それからライブに伺っていて、ファンとしてずっと曲も聴いていて。内澤さんは本当にすごく音楽の才能に溢れている方だなと思っていました。

内澤:恐縮です。僕らがCDデビューしたのが2009年で、メジャーデビューしたのが2011年なので、ほんとに右も左もよく分からないような状態の時でした。

長谷川:その時は僕もプロデューサーになったばかりで、すごくいい出会いになったなと思っています。ディスコサウンドからロックからバラードまで、andropさんの音楽を聴いていると、多彩な才能をお持ちなんだなとすごく思っていて。それで4、5年、もっと前からかな… 内澤さんに劇伴を書いてもらいたいなっていうのは、ずっと思っていたんですよね。

内澤:ありがとうございます。

長谷川:僕らの出会いの話で言うと、『End roll』からまた一つ挟むんですよね。『家族狩り』(TBSドラマ)で主題歌をお願いしたんですよね。

内澤:2014年ですね。

長谷川:はい。で、その時も2曲、すてきな曲を上げてくださって。ただ、プロデュース部と監督とで、それぞれ意見が分かれたんですよね。

内澤:そうですね、全然違う方向の二つの意見が出て、その2パターンを作って、って感じで。そこでも、長谷川さんは“妥協がない人”だなと思ったんですよね、作品作りに対して。だから今回オファーを受けた時、100%向き合わないとだめだっていうのは、思いましたね。

長谷川:内澤さんはすでに映画の劇伴をお書きになっていて、それが素晴らしくて。でも、ドラマは時間があまりなかったり、そもそも、まだ撮影に入っていないタイミングから劇伴の制作に入るからイメージが湧きづらいよなぁ、とか、申し訳ないという気持ちがありつつ、結局のところ、内澤さんしか考えていなかったです。

内澤:でも、けっこう何回か「僕だと無理だと思います」とお話はしていて。すごい大変だっていうのも分かりますし、けっこう逃げ腰でお話させていただいたんですよね。大丈夫ですかね?みたいな。

長谷川:そうでしたよね。断られそうな空気も若干感じつつ、「いや、時間はあるので大丈夫ですよ、ご無理のない範囲で」とか言って。でもほぼ懇願していましたね。「内澤さんじゃないと困ります!」みたいな(笑)。

内澤:今まで音楽をやってきた中でも、ドラマの劇伴はやったこともなかったですし、相当大変なんだろうなっていうのは、映画の劇伴をしていても感じていて、もっと“適任”な方がいるんじゃないかと思ったりして。名前を挙げてくださったのは、もうとんでもなくありがたいことで、うれしいと思っていたのですが、もっと力がないとだめだろうな…みたいな。

長谷川:いやいや、全然そんなことは。

内澤:例えば主題歌だと、1曲に命を込めてっていう感じなんですけども、劇伴となると、いろんなシチュエーションに合わせて、いろんな音楽を存在させるじゃないですか。それはとんでもなく大変な作業というか。多分僕は普通の人よりも時間がかかるタイプの人間でもあるので。