職を失い生活に困窮していた矢口容疑者は孤立状態にあったとみられます。犯行の動機や、背景にある困窮や孤独・孤立の支援について取材しました。
東京の大学を卒業後、県外の職場に務めていた矢口容疑者。
捜査関係者によりますと、警察の調べの中では「職場でいじめられた」などといった趣旨の供述をしていました。ただ、その実態は確認されなかったといいます。

その職場を解雇されて以降、職を転々とし、事件のおよそ1年前から無職になっていました。
1人で暮らし近所付き合いはなく、親族とも疎遠に。人間関係がうまくいかず、孤立していたとみられます。
そして、事件の数週間前に犯行に使った可能性のある包丁を購入していました。

長野大学の小林万洋教授は、過去の無差別殺傷事件と共通する部分があると見ています。
長野大学 小林万洋教授:「交友関係とか異性関係、家族関係が非常に劣悪な者が多い。いろいろな動機があるがその背景に孤独・孤立が影響しているのは確かだろう」
過去の事件の動機をデータから読み取ります。
こちらは法務総合研究所が、過去に無差別殺傷事件を起こした52人を対象に行った動機の調査結果です。

特定の人への不満や、刑務所に入ることへの逃避などが動機に挙がり、このうち最も多かったのが、「自己の境遇への不満」でした。
自分が置かれた境遇や現状に対する不満やなどを晴らすためや、自分が正当に評価されていないことから社会に不満を抱き、社会の構成員を殺害しようと考えるものです。

長野大学 小林万洋教授:「自分の境遇に対して不満を強めていくのは、孤独・孤立がより不満を強める促進要因になる可能性は十分あり得る。その時に、自分が思っているネガティブなものを受け止めてくれる人がいれば、他の角度からもう一度見つめ直すことができる」
矢口容疑者は「自分は中上流階級だ」といった趣旨の供述をしていて、理想の自分とかけ離れた境遇に不満があったとみられます。
ただ、具体的な話はしておらず、動機はわかっていません。