姓をめぐる問題 労働裁判にも
日本では1996年、法制審が「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申。
選択的夫婦別姓制度の導入が提言されている。
今年2月、28年ぶりに国会で審議入りしたものの、採決にいたらなかった。長くたなざらしにされてきた現状がある。
また、国連の女性差別撤廃委員会は、2003年以降、4回にわたり「選択的夫婦別姓」を実現するよう日本政府に勧告している。

福岡大学 所浩代 教授(労働法)
「日本政府は、『婚姻により改姓した人が不便さや不利益を感じることのないよう、旧姓の通称としての使用拡大に向けて取り組んできた』と言っていますが、職場では、2つのトラブルが起きています。いずれも裁判で争われました。
一つは、かなり古いですが、改姓した場合に、職場が新しい氏の使用を認めない嫌がらせをした例です(労働者側が勝訴)もう一つは、改姓したが、旧姓の使用が認められない例です。(労働者側が敗訴)
いずれも、本人の希望が通らず、どのような氏名で自己が認識されるかは、職場の裁量に委ねられている現実を示しています。最高裁は、氏名は『人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であつて、人格権の一内容を構成する』(1988年2月16日最高裁判決)と述べていますが、どの氏名において自分の人格を表現するかという自己決定権は、職場の合理性や社会全体の利便性に劣後するというのが日本の現実です」
記者
なかなか国の議論が進みません。この現状をどうみていますか。
福岡大学 所浩代 教授(労働法)
「実際に若い人とか40代くらいまでのキャリアを築く中で困難に直面している方々の声が国会に届いているのかなというのは少し不安があります。SNSが普及するようになってデバイスを使って声を発信出来る人の声が国民の多数の声のように誤解してしまうかもしれない。こういう選挙の時に、様々な情報を私たちは理解していかないといけない。勉強する機会を持つことが大事だと思います」
聞き手 RKB毎日放送 記者 下濱美有