SNSで“憶測”拡散の今 テレビの選挙報道のあり方は

小川彩佳キャスター:
「憶測」という言葉がありましたが、私も先週、news23で放送した党首討論の後にお休みをいただいたことで、「討論の影響があったのではないか」という憶測が広がってさまざまなご心配をおかけしてしまいました。本当に前から決まっていたお休みが、たまたま党首討論の後というタイミングに重なっただけだったので、憶測が独り歩きして既成事実化してしまう恐ろしさを感じました。ここまで広がるとは思わなかったです。

藤森祥平キャスター:
「公平性を重視し過ぎ」など、われわれ、真剣に受け止めなければいけない指摘が多いですね。

TBS政治部 岩田夏弥 部長:
「公平とは何か」というのは、この間ずっとテーマにもなっています。例えば各政党ごとに同じ時間で伝えるという、いわゆる“量的な公平”は簡単ですが、それだといろいろなことが伝わらないと思います。

そうしたことに縛られすぎずに、事前の報道をどう充実させて、有権者が投票するときの判断材料を提供できるかということがすごく問われていると思います。

そうした中、今起きているのが「参政党」の動きです。JNNの7月の世論調査でも、比例代表での投票先で3位まで急上昇しています。

「参政党とは何か」「どうしてこれだけ支持が広がっているのか」ということは、やはり皆さんも知りたいことですし、われわれも取材しなければいけないことです。

各党、同じ時間を使って報道しようとすると、参政党の動きをしっかり伝えることもできませんから、一つの大きなニュースとして、日本で起きていることを伝えるという意味で、参政党とは何か、何を主張している党なのか、間違っていないのか、実現できるのかなど、いろいろな観点で伝えるということもすごく大事だと今は考えています。

藤森キャスター:
今まではどうしても尻込みするというか、一歩後手になるようなことも積極的に動いていくということですね。

TBS政治部 岩田部長:
むしろ積極的にやっていかないと、有権者にしっかりした情報を提供できないのではないかというところです。

トラウデン直美さん:
これまでは「平等」ということが念頭にあったからなのか、どうしても時間が短いように感じてしまう場面は結構あったと思います。しかし、SNSで切り取られた動画が拡散されたりすると、『平等ってなんだろう』『公平って何だろう』という気持ちにもなります。

選挙報道をするにあたって、「参政党」のようにSNSでどんどん広がり勢いがある政党でも、新しい政党だったりするとなかなか大きく取り上げることは(少なかった)。これまでは主要政党がメインになってしまうのは避けられないことだったのでしょうか。

TBS政治部 岩田部長:
主要政党というのは、過去・直近の選挙も含めて大勢の人に支持されたから主要政党になっているわけです。

その政党が国会の中では中心にいて、いろいろなことを決めるときに重要な役割を担ってきたとなると、まず、その人たちが何を考えて選挙に臨んでいるのかというのは、選挙全体として伝えるべき大事なことではあるはずです。

一方で、それだけやっていればいいわけではなく、そこに不満を持つ人たちや、新しい動きが出てきたときに、『新しい動きだけど小さいから』と言って、見られなかったら伝わりません。なので、バランスも考えながら、しっかりそういったことを伝えていく。

それからネット上には本当にいろいろな情報がありますが、取材をしてファクトに基づいて、しっかり伝えるということが何よりも大事だと思います。

小川キャスター:
選挙特番もありますが、本来、選挙特番で放送するような情報を選挙の前に伝えなければいけないわけですよね。

トラウデン直美さん:
去年の選挙特番の際、「できるだけ取材に行きたい」と言って取材に行きましたが、その現場で見てきたものってすごく面白いんです。

各候補者が有権者とどういうコミュニケーションをとっているか、どういう選挙活動をしているかという姿を見て、『選挙ってこういうふうに動いているんだな』と感じました。

応援に来ている人や応援の声、野次の声を見るというのは、事前に空気を感じるという意味でも、『(選挙が)終わった後より、前に見たいものだな』と、去年の取材経験から私自身がすごく感じたことです。

もちろん公平・平等はとても大事なことですが、もっと出していける情報はたくさんあるのではないかと思います。