震災後、途絶えていた福島県南相馬市鹿島区沿岸のサケの定置網漁が10月、12年ぶりに再開しました。
亡き父の想いを受け継ぎ、福島の漁を盛り上げようと奮闘するある漁師の姿を追いました。
南相馬市鹿島区・真野川漁港。
網にかかった生きのいい魚。福島の「常磐もの」です。

「取れ高?取れ高は全然ダメだよ。サケは2匹だからまだ脈はあるけど」

こう話すのは、中学校を卒業後、地元で漁師をはじめた鎌田豊孝さん・46歳。獲れ高には満足していませんが、その表情はどこか喜びに満ちていました。
東日本大震災で発生した津波。
南相馬市鹿島区の沿岸部も甚大な被害を受けました。

回遊するサケを、沖合に設置した網で漁獲する定置網漁。
南相馬市鹿島区の沿岸では半世紀以上の歴史があり、伝統の漁が代々受け継がれてきましたが、震災後はその歴史が途絶えていました。
そうした中、10月24日、その定置網漁が復活しました。

定置網漁「豊漁丸」船長・鎌田豊孝さん「定置網漁は12年ぶりかな。自分もやっぱり親父がやっていたことを継続していきたいという気持ちもあった」
地元で長年定置網漁を操業してきた鎌田さん一家。
地震発生直後、父親の豊吉さんと家族の宝物である船を守ろうと、港に駆けつけました。
鎌田さん「父が車をとりあえず高台の方に移動すると言っているから大丈夫だなと思った。そしたら組合の建物の上の辺から波がどーんと来ちゃって。親父がそのまま波に飲まれるところも見てしまった。自分の目の先で見てしまったから、それがショックで」
豊吉さんは、津波で帰らぬ人となりました。

船に乗っていた豊孝さんは九死に一生を得ましたが、漁の道具は全て流されてしまいました。
「もう漁はできない」
当時はそう思ったといいます。
それでも・・・
鎌田さん「親父ができたことが俺にもできないってことはない。あとはみんなの支えがあったから組合の支えもあったし」