「抗日戦争勝利80周年」という特別な夏

日本でいう「戦後80年の夏」は、中国から見れば「抗日戦争(=日本との戦争)に勝利して80周年」の夏にあたります。7月7日は、日中戦争の発火点となった盧溝橋事件から88年にあたります。北京郊外にある盧溝橋付近で起きた日中両軍の発砲事件を指しますが、今日の記念式典に習近平氏が出席し、中国共産党にとって「戦勝80周年の特別な夏」を演出するかもしれません。

そして、8月15日を挟み、9月3日には北京の天安門広場で、抗日戦争勝利80周年記念式典が開かれる予定です。習近平主席は重要演説を行い、軍事パレードを挙行するでしょう。この式典にはプーチン大統領も参加すると見られています。日本との戦争に勝ったということは、共産党が中国を統治する正統性を示す最大の根拠です。日本が降伏文書に調印した80年前の9月2日の翌日である3日を、中国は戦勝記念日と定めています。

重要なBRICS首脳会議を欠席してまで、習近平主席にとって「この夏」が意味するものは一体何なのか、注目せずにはいられません。中国政治の内部はなかなか見えませんが、だからこそ、「ああかもしれない、こうかもしれない」とあれこれ推測を巡らすのは、難しいながらも興味深い作業なのです。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める