■2015年ころから物資を入れた隠し倉庫を作って侵略に備えていた
パルチザンの実際の活動内容を具体的に聞いた。政府の職員でもあるジェムチュゴフさんは日中普通に生活し、活動は主に夜中だ。過去にはロシアの政府要人の暗殺も行った経験があるという。
元パルチザン ヴォロジーミル・ジェムチュゴフさん
「駐車場に停めてあるロシアへの協力者の自動車に夜中のうちに地雷を仕掛ける。ひもを引っ張って磁石で車の底に付けるだけ。難しいことはないです。(中略)ロシア軍の補給を遮断するという指示もありました。ロシアから占領地域に入ってくる鉄道の線路を月に3回ほど定期的に爆破します。橋や通信施設も爆破しました。(パルチザン用の武器弾薬の入手は)特殊部隊が夜中にドニプロ川をボートで渡り隠し倉庫を作ります。物資を埋めて印をつけ、位置情報をパルチザンに伝えます。パルチザンはそれを掘り出して持ち帰ります。(中略)侵攻された2月以前から準備は進めていました。地雷、通信機器、武器、お金、食料、衣服など隠し倉庫に事前に用意していたのです。2015年ころから侵略に備えていたのです。ハルキウ・ヘルソン・ルハンシク・ドネツクこの4州では今年も去年も隠し倉庫が作られました」
パルチザンの主な役割は3つだ。
① 要人暗殺
② 拠点破壊
③ 敵の位置情報を提供

中でも3つ目の位置情報の入手と提供は、高軌道ロケット砲システム『ハイマース』の有効活用に欠かせない重要任務となっていた。
元パルチザン ヴォロジーミル・ジェムチュゴフさん
「ハイマースが届いてからはカラシニコフの代わりにスマホを使うようになりました。侵略者がいる兵舎、弾薬庫、司令部などの位置をパルチザンが入手して位置情報を当局に提供します。その情報をもとに軍はハイマースで毎日正確な攻撃をするのです」
敵の位置を正確に調べ、グーグルマップで確認、それをパルチザン専用アプリで軍に送信するというシステムができていた。連日ハイマースによるピンポイントの重要拠点攻撃が報じられていたが、パルチザンの活動の賜物だったのだ。