茶村真一郎さん(当時の安佐動物公園飼育員)
「チンパンジーの場合はお母さんが育てるとずっと抱いています。それで体温も維持されるし、(人間だと)ずっと抱いておくこともできないので赤ちゃん用の服を着せたりした」

茶村さんは当時、安佐動物公園の飼育員として生まれたばかりのナナの面倒をみた1人です。交代でナナを自宅に連れて帰り、見守りました。

茶村さん
「(幼いナナを)バスタブに入れて洗ったりした」
Qイヤがったりしない?
「ものすごく喜んで暴れるんです、うれしくて」

生後1か月のナナは、体重も増え、かわいい笑顔を振りまいていました。たちまち園の人気者となったナナ。それでも、人間に育てられたナナには大きな課題がありました。

当時の飼育員
「ほんと、人間の赤ちゃんでしたよね。すぐ甘えてきて。(人間のように)2本足でよちよち歩き。こりゃまずいなと思った」

1歳になると、飼育部屋に引っ越し、チンパンジーとしての第1歩を歩みます。

大好きなぬいぐるみで遊び、一安心と思いきや…、飼育員が見えなくなると寂しそうな鳴き声をあげます。ナナには、チンパンジーとして生きるための訓練が必要でした。

柵ごしにナナを毛繕いするのはユウコです。園のなかで、ナナに一番優しく接したのが、ナナと同じく人工飼育で育てられたユウコでした。

ユウ子と同居を始めると、先生・兼母親役としてナナもユウコに心を許し始めました。

ナナとの出会いは出産経験がないユウコにも変化をもたらしました。

当時の飼育員
「ユウコが見せるし、ユウコが教えるし、でいろいろ誘ってこういう風に活発なチンパンジーになった。それまでは、こんなに活発なチンパンジーじゃなかった。あの子(ユウコ)があそこまで忍耐強く優しい子だとは思いませんでしたから」

6歳で北海道から園にやってきたオスのサンボウ。仲間の出産も子育ても見たことがないナナにとって、サンボウとユウコとの同居は、チンパンジーとして大事な学習でした。

当時の飼育員
「交尾だけでなく、挨拶や餌の食べ方など全部群れの中でひとつずつ勉強していくもの。(ユウコが)子育てをする姿をナナが子供のうちに見せたい」

そんなナナにさらなる試練が襲いかかります。