多くの家族が潮干狩りに訪れる静岡県浜名湖特産のアサリ。実は近年、深刻な不漁に陥っています。2021年の漁獲量は約100トンで、6年前の2015年と比べると30分の1ほどになっています。そこで、不漁が続く浜名湖のアサリを再生しようと浜松市の中学校でユニークな実験が始まりました。
浜名湖のアサリ漁を復活させようと、9月下旬から浜松市北区の三ヶ日中学校で始まった実験。そこに使われている秘密兵器が「鉄デバイス」です。開発したのは群馬県の太田工科専門学校で、鉄デバイスは「海のサプリメント」だといわれます。
<太田工科専門学校 小島昭校長>
「人間の血液が赤いのは鉄。海の中でも、鉄があると魚や貝の餌であるプランクトンがいっぱい増えてくる。そこで、どうやって鉄を増やすかというのがポイントだが、そこで鉄と炭の板をくっつける」
鉄デバイスというのは、鉄と炭を特殊な技術で組み合わせてプレート状にした装置のこと。これを水に沈めることで、植物プランクトンの発生を促進する効果がある鉄イオンが水中に溶け出します。これによって植物プランクトンが増え、それをエサとする貝は大きく育ち、収穫量も増えるといわれます。
水中に沈めるだけで貝が大きくなる装置、耳を疑うような話ですが、鉄デバイスを使った実験は過去15年間、北海道などでカキを対象に行われていて、すでに多くの成功例が報告されているんです。
今回の実験は、鉄デバイスのアサリへの効果を調べようと、三ケ日中学校の2、3年生と協力して実施されています。実験方法はアサリが入った養殖かごを用意し、鉄デバイスと腐葉土と砂利、鉄デバイスと砂利、砂利だけを入れたもの、この3種類の条件に分けて変化を調べます。
<実験に協力する生徒>
「今の三ケ日は観光客も少ないので、自分たちで大きなことに協力していけることが誇らしいです」
「アサリに関しては『食べる』ということしか知らなかったので、今回の鉄デバイスっていうのが大事になってくるっていうのを知ったので、知らなかったことを知っていけて楽しいなと思った」
これから約1年間、貝の育成状況を調査し、その結果は授業の一環として定期的に生徒たちが発表します。この中学校での実験が成功すれば、浜名湖のアサリ再生は大きく前進する可能性があります。
<太田工科専門学校 小島昭校長>
「今、アサリが日本産のアサリがなくて外国から来たものを食べているが、やっぱり、浜名湖で生まれて浜名湖で育ったものを浜名湖の人たちが中学生が作ってやる、それを未来につなげることは、すごく素晴らしい話だと思いますので、手伝いができたことは浜松の発展のためにもなれるのかなと思っています」
鉄デバイスを使ってアサリを大きくするという夢のような実験。浜名湖にどのような恵みをもたらすのか、今後も目が離せません。
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